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おさらい


 エフが動くと呼ばれる現象が正直よく解っていない。曾祖父ちゃんの家で見た様な細かな粒子を見る事はバイト中には無かったと思う。注意して見ていた訳ではないから…というか、何処を注意して見るべきかも予測出来ないので言い切れないのだけれど、何かしらの因果関係を表すものというイメージで捉えている。大雑把にしか説明出来ないが、生きた機能であり可能性だと聞いている。何かが起こる可能性が形を変えながら移動するということらしい。回路と呼ばれている状態もある。一般には理解しやすいという理由で生命原物質という名前を使って説明されるが正確には物質とは呼べない。関係者の間ではエフかfsと呼んでいる。動かなくても機能しているけれど、動いて反応し何かが起こることで機能しなくなる?…いや、良いものから悪いものになる可能性がある?…ちょっと混乱してきた…。取り敢えず良いものも悪いものも拡散されると可能性が分散する。機能としては減衰する。しかし悪いものも死んで無くなるのではなく反応と変容を続けて世界のバランスを保っている。そのバランスこそ神がかりであり、それを保ち続けることは神にしか成せないわざである。

神様をfs理論で説明するとき、それは世界のバランサーとして自ら機能する事が可能であり、どんな小さな神様でもエフの動きをある程度は把握できる存在であると考えられる。神様等の浮遊生命体表象は人間には感知出来ない間仕切りの中で生まれ、一般的な生物とは全く別の進化を遂げた生命体だとする説が最も有力である。人間に捉えられるのはその表象としての姿だけだ。それは人間が感応出来る一部分であり、実像は未確認であると言わざるをえない。実体があるはずだと考える人もいるらしいけれど残念ながら一切それを示す手がかりは無い。…という話だ。

連盟から渡されたガイドブックの内容と蓬莱さんから聞いた事をそのまま言ってみただけで、実際に神様と話をしたはずの俺でもファンタジーを聞かされている感覚だ。蓬莱さんの言う通りならば留奈さんだって神様なのだろうから、そのバランサーとかエフの動きを把握できる存在のはずだけれど、話す時の感覚としては今も従姉妹だった頃とあまり変わらない。知識や考えている事を現実に反映させることよりも、現実に目の前にある関係を優先しながら考える方が性に合っている。子供の浅知恵と言われるかもしれないが、留奈さんの場合は俺が変に敬ったり堅苦しくしても喜ばないと思う。但し多少は大人しく言う事を聞かないと不満を言うようにはなった。神様として話す時には特に。

 曾祖父ちゃんの家は既にあの後の雨で一部の屋根が抜けている。ライフラインは止まっていているから火事等にはならないはずだが、取り壊す為の費用に祖父ちゃん達が頭を悩ませている。ちゃんと考えて用意はしていたらしい。それでも更地にしたところで二束三文の値段にしかならないと言っていた。市街地なら売却すれば更地にする費用も埋められるから問題ないのだろう。ド田舎にしかない種類の悩みである。



 頭の中でfsについての知識をおさらいしていたら、途中で自分の近況がチラついて集中を削がれた。基本的に難しい考え事は長続きしない。自分でも理解出来ている自信の無い事柄ならば尚更。直ぐに諦めてしまう。いや、だからこそ勉強しに来たのだ。基本の確認から入るのもアリだな…。

資料館に来た目的がなんとなく解ったところで、期待したほどの動きも特にない。梅村さんは首を傾げながら木根さんを見ている。


「無い。」


何かを察して木根さんが首を振り、ボソリと答えた。


「海塚さんはどうですか?」


「僕は最近はよく見えないんでね。

 松尾君も平静だし、無いんじゃないかな。」


落ち着いて答える海塚さんは物静かな医者か学者みたいだ。派手めのアロハシャツを着ているのが逆に格好良く見えてきた。

 …あ、そうか。記録取ってるから静かなのか。

そういえば初めて会った時の小羽田さんもそうだった。抑えた声と動きは出来る限り自分がノイズとして入らないようにしていたのだろう。

 …成程なぁ…。

 何回かやってると理解出来ることがある…。

ふと思い当たる。そうだ。分からないから理解出来ないと言うと変な日本語みたいだ。例えば、未経験で裏側までは推測や予測が出来ない状態では理解出来ないこともある、と言った方が正しいのかもしれない。そう考えると連盟という会社の意義とか、そもそも保健衛生局の目的とか、神寄せ信仰の現在地とかも、実務に関わる人達に混ざれば理解するのも難しいことではなくなる可能性もあるわけだ。

一応は神寄せを信仰しているらしい六堂が理解出来るのは同じ信者くらいだと思っていたけれど、信者さんに混ざるだけの、スパイみたいな立場で居るならば冷静に事情が読み解けるのではないだろうか。どう足掻いても信者さんに混ざる機会はやって来てしまうことが、失礼だとは思うけれど嫌だった。俺の信仰の自由は保証されないと困るから、俺にとって神寄せと呼ばれるのはボランティア感覚である。曾祖父ちゃんとは立場が真逆になる。馬鹿にしていると受け止められるかもしれない。そんなものは認めないと言われたら悪いけど辞めるだけだ。

 ………。

 ところで何が無いんだろう…。

もの凄く気になりつつも聞くタイミングは今じゃないだろうと配慮してひたすら待っている。自分の反応について周りがアレコレ話しているのを聞いても俺自身には何のことやら解らない。真面目な考え事にも飽きてきたので仕方なく装飾品を眺めるフリをしながら腹減り問題の解決策を考えていたら、逆効果でより腹が減った。

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