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日曜日


 次の日は日曜日だった。日曜日にも部活動があるのは大会前の野球部くらいである。試合やイベントの予定でも入らない限りは学校に用事などない。

高校では迷った末に候補でも何でもなかったバドミントン部に入った。結局は先々の事を考えると文化系に入るよりも運動部で体力をつけておいた方が良いという有りがちな結論に至り、運動部を志望していた野々原から情報を貰って最初から考え直したのだ。ちなみに野々原は中学でバスケ部だったのを俺と同じような理由で続けるかどうか迷っていたそうなのだが、堂々巡りの末に結局はバスケ部に入った。本当に好きだったケースだろう。自分はもうチームの難しさに疲れてしまうのは嫌だったから、個人戦が出来るスポーツを選んだ。一度は見学をしていたものの、ルールもよく知らないまま入部してしまったのでルールブックを図書館で借りて勉強するところからのスタートである。昔よく遊んだ記憶とはまた別の、ガチスポーツのレベルに驚いてしまう事もあったが、今のところは楽しい。中学校のバレーボールに比べると落ち着いた雰囲気で先輩達も恐くないから居心地も悪くない。恐くないから優しいのではなく、厳しいのだけど言い方が冷静で簡潔なのだ。それで努力を怠るならばそれまで、というやり方なのだと理解しておかないと痛い目に遭うパターンだと思う。ある意味もっと怖い。

何日か前に丁度よく連盟から連絡が来ていて、今度は最初の時と同じメンバーに加えて、別の団体の人達が協力してくれる事になっていた。よく解らないが国の事業で研究と支援を行っている分には同業者間で競争するものではないらしい。普通に交流があるから今後の為にもきちんと挨拶しておくといいと蓬莱さんからはアドバイスを貰った。曾祖父ちゃんの家にいたのと同じ(と思われる)ぶち猫を見たのは昨日のことだ。本当に、なんていいタイミングなのだろう。頭の中では留奈さんの姿がチラついてちょっと怖い。

 集合場所になったのは坂島市の郊外にある小さな駅だった。市内の駅の中では文吾町からは一番近く、西高からも近く、自転車で辿り着こうとする俺はその途中で休日の人気のない学校を横目に一人汗だくになっていた。日陰も何も無い郊外の道路は午前中から気温が上がり、自転車は速度を出せば風が作れるからまだいいものの既に夏のような暑さである。バイトで出掛けるのだからとヘルメットもきちんと被っていたら、この短髪でも蒸れる。せめて首に冷感グッズを仕込んでくるべきだった。

籠に入れたリュックサックに入っているのは財布とスマホと水筒とタオルだけだ。リュックが濡れるから保冷剤は入れたくなかったのだけど、判断を間違ったかもしれない。

 目指すべき場所は遠くからでもよく分かった。ド田舎の文吾町に近いだけあって駅周辺とはいえ空は広く遠くまでも見通せる開放感がある。張りぼての様に改札口だけを覆う木造の駅舎は随分と草臥れた印象ではあったが、西高生が通学に使う為に平日の利用者は相当数が確保される。恐らくそのおかげで一応は駅員さんが配置されており、見た目だけなら無人駅だが実はそうではない。ホームの屋根と風除けには緑のツタが這い、市内といえども活き活きとした大自然の侵食する様を観察出来た。周りは住宅とその間を通る道路、そして田んぼと畑である。家がある程度は密集していて道が整っているだけで、文吾町民としては、まあまあ親近感の湧く景色だ。とはいえド田舎に誇るように繁る緑の濃さと勢いはやはり独特もので、ここの空気は含む湿度と生臭さに人間が参る程ではない。不思議と少し離れただけの市内では乾いた土の匂いがして砂ぼこりが舞う。


「すみません。おはようございます。」

駅に自転車置き場が無いので近くの預かり所に預ける事になる。駅の近くにはそれらしい人影が既に見えていたが、支払いは後なので一先ず預ける事にした。駐輪代も経費で出してもらえると聞いている。倉庫か町工場の跡に見える建物の入り口には小さなコンテナの様な部屋があり、ガラス張りの窓口が設えられていた。テレビの音が聴こえるその部屋の奥から呼ばれて出てきたのは、いつも怒ったような対応をすると恐れられるお婆さんである。空きがなければ詰んでしまうが休日なら大丈夫だろう。


「おはやいもんかいな。もう十時やないか。」


噂の通りにいきなり文句を垂れながらやって来た。何故かハナからキレている。ツッコミ担当の芸人のノリだろうか。どう振舞えば良いのか解らず相手からのプレッシャーを感じつつも淡々と事務手続きを終えた。挨拶にも失敗することはあるのだと勉強にはなった。正直意味は解らない。

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