表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/75

神の使い


 聞いた話を簡潔に纏められるほどスッキリとした会話にはならなかった。聞きたい事は色々とあるのに言いたい事は言い難い相手だ。一つずつ箇条書きするように覚えなければならない。更に実はとても大事な部分が引っ掛かっている。留奈さんは俺が関係者とやらのお仲間になる前提で話をしていた。親族がそのつもりなのは明白だけれど、こっちはまだ何の返事もしていないのだ。


「"まずは氏神様に参ろう。話はそれから。"

 …それしか言えん。

 私から話すもんやないから、本当は。」


「……座っていい?立っとんの疲れた。」


「どこに?」


「ここ、しゃがむ。」

言うなり勢いよくしゃがみ込むと同時に思い切りデカい溜息をついて両手で頭を抱えた。直ぐに留奈さんが音もなく近くに寄って来たことに気が付いて、自分が今迄どれほど迂闊だったかを思い知る。よく見れば草を踏んでも跡が無い。まず枯れ葉の砕ける音がしないのはおかしい。さっきの竹籔の揺れは本物ぽいけど、そういう存在の証拠に有る時と無い時が在るのは変だ。有り得ない。だからといって人間ではないと判断出来る奴がいるかよとは思うが、何の不審も抱かないのも間抜けている。


「……怒ってる?」


「いや、留奈さんは知らんやん。

 ウチの人等が勝手にその…情報操作したんやろ?

 俺が気付かんように。

 …自分で変な子供やと考えんように。」


「あ〜〜。そう思うんや…。

 私がやらせたとは思わんの?」


「え?」

いくら留奈さんがハッキリした性格だと言っても流石にウチの家にまで発言権の強い立場ではないだろ?


「神様の使いはな、人間様より偉いんやで?

 六堂家みたいな人等は他にもおるし、

 普通は私が仕組んだって考えると思ってた。」


「…人より偉い使いパシリ?あ、使い魔?」


「パシリ!?いやいや、ありえん!

 御使いはパシリでも使い魔でもないから!

 神使(しんし)て呼ぶ人もいて…、あ!

 "おつかい"て、子供のお使いやと思ってる!?」


「?じゃ、何?」


「…例えるなら、神様の国から遣わされた、

 連絡係であり分身やったり一部でもある化身。

 私が見聞きした事は神様に筒抜けなんやで?」


「…ふ〜〜ん…。」

よくわからない。稲荷大社の御神体が何者かも俺は知らないのだ。


「ふ〜んで済まさんといて欲しいなぁ。

 使い魔て式神とかと同じやろ?失礼やん!?

 どこで覚えたんか知らんけど、

 使い魔は人間が使えるもので、

 神の使いは神様にしか使えないものやの。

 見えるのに判別出来んって不思議やわ。

 …鋭いんか鈍いんかわからんな、重くん。」


真顔で説教された。失礼と言われても、そうなのか、としか言えない。イメージで決め付けるなということだろうか。割と本気で良くなかったみたいだ。怒らせてしまった。…それが何故かは実はまだよくわかっていない。

「他に誰がおんの?その、関係者?の人。」


「それは関係者にしか言えんわ。」


「俺はそうなんやろ?」


「やから、そうなりたかったら、

 まず氏神様に参って。てことやわ。」


だからそれ。

 俺はなりたいとは言ってないし、

 何なら騙されたんやし、

 なんでそれが当たり前みたいに話が進んでんのかという部分を指摘する反論を誰か俺の代わりに披露して当人が全く意図しない展開に進む推進力の謎を解明してくれ。

「あ…あ〜〜、勘違いしとった。

 まずそっちからやないとアカンの?」

よく解った。

 俺が上手く言えんからや。

 言わなアカンてタイミングで、

 よう言わんからやな。…もう本当にな、

 いい加減この…気の弱いの何とかせんとあかん。

 シャレにならん。


「勘違いゆうか、序列があるから。」


「…へぇ。案外、厳しいんや…。」

 いや、考え方を変えたら意外とチャンスなんか?

 どっちみちこういうのが見える資質があるなら、

 何も知らん方が不用心で危ないかもしれんしな…。

日本の神様は大らかでダイナミックなイメージだった。少なくとも俺の中では序列を気にするせせこましい(細かい)感じではなかったのだが、正しいのは留奈さんの方だろうからやはり勘違いはしていたのだと思う。

序列が大事な縦社会の人格を相手にする機会は学校と家だけでもう十分だ。こんな人達は結構ワラワラいるのだろうか?とりあえず、連盟を組める位には存在しているようだ。

「神の使いて女の人なの?ホントの名前は?」


「………。名前はいっぱいあってな。

 女の人ではないけど、男の人でもありません。」


「なら、何やと思ったらいいの?俺等は。」


「狐。」


「…………。」


「言うてるやん、最初から。」


そう言われましても。

「狐と話したことないしなぁ…。」


「話してる、話してる。」


留奈さんは自分を指さして明るく笑っている。

「……………。」

狐は神経質だと聞いた事がある。化けて人を騙すとも伝えられる。他人から聞いた情報は何一つ当てにならないご時世だと父さんがボヤいていたのを思い出した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ