可能性
「私の専門じゃないから、細かい事は、
小羽田さんに説明してもらうのがいい。」
「はい。」
良かった。あまりにもオカルトじみていて何が何やら訳が分からない。蓬莱さんの話し方はどこかイタズラっぽく、からかっているようにも見えた。嫌味なくらいに分かりやすく優しい。俺はそんなに子供っぽい事を言ってしまったのだろうか。ついさっきの小羽田さんとのやり取りと比べると違いがよく分かる。あれが本来の姿だろうから。
「要約するとね、日本の神様は、
fsの考え方でも説明しきれないの。
未だに一切証明出来ない。
それは能力者が何故それに感応するのか、
その始まりがイマイチ説明出来ないから。
だから本当に、理解出来ないし、怖い。」
「?…日本の文化…じゃないですか?
神様が居るのは、そういう信仰があるから。」
「信仰を元に人格やビジョンがつくられて、
それが投影されているという考えよね?
それだと個人差があるはず。
同じものを見ることは考えにくい。
…殆ど有り得ないと思う。
赤の他人とイメージが全く同じになるなんて。」
「ああ…確かに。」
「それが、同じになる結果が出てる。
聴覚の会話だけでも恐ろしいのに、
重紀君のような視覚観測者のデータでも。
これはね、本当に恐い事。日本だけ。」
「え?」
「びっくりするよね…。
…浮遊生命体表象は残念ながら翻訳不可能。
日本独自の概念とされていて、
他の国の神様には当てはまらない。
日本の神道とも少し違う。
押し付けがましいのはトラブルの元だから、
その辺はしっかり弁えて貰わないといけない。」
「あ…はい。わかりました。」
今まさに押し付けられている気がしなくもないのだけど、連盟の情報は俺が実際見たり聴いたりしてきた事を説明してくれている。これが全部嘘でチョロい自分がまんまと騙されているのだとして、では一体俺は何を見て何を聴いたのか。連盟以外の誰が納得させてくれるだろうか。少なくともこの人達はマトモに受け取り真面目に応えてくれている。
但し、訳が分からないのはどうにもならない。頭が良ければ理解出来る内容かコレ?俺が馬鹿だからじゃないよな?
…何が解っていないのかも分からない…。
神道とも違う神様…?何それ??
「つまり僕等の知ってる神様と、
僕の話した神様は別のものなんですか?」
「宗教的な神様とは定義が違うでしょうね。
…私は大昔の人が観測した結果だと考えてる。
現状では変則的に動くものだから、
今も在るのか、もう無いのかは、
私達には一切、断言が出来ない。
大き過ぎるものの全容を捉えた人が、
絶対に居なかったとは証明出来ない。」
「………。表象は神道の神様とは別物…。
でも今もその現象は起きているかもしれない…?」
断言は出来ないけれど本当は言いたい事を言い当てられたようだ。蓬莱さんは嬉しそうに含み笑いをしている。
「通論として神様は神様で構わないはず。
そして恐らくそれは、この宇宙に存在する全て。
何から何まであらゆるものに行き渡り、
巡り回る機能そのもの。
…ここからは持論だけど…もっと言うと、
日本の神様の概念はその真相に限りなく近い。
其処から現実に可能性が生まれる。
其れは一つの回路の中に組み込まれ、
其れを知る貴方達は感応を共有出来る。」
「………。」
「あくまでも持論。…推論と言いたいけど、
他で言うと怒られるから、言わないようにね。」
「…はい。」
??どういうこと??
半信半疑でぼんやりする俺のまるで意味のない返事に、留奈さんによく似た蓬莱さんが微笑む。
…卵が先か鶏が先か…。
これは何処から始まっているのか…。
俺が居るから宇宙を感じる、
宇宙は俺を知覚するのか?
…?それってどういうことなんだろう…。
恥ずかしい話だが、ある年齢層に特有の病気を発症した、或いは拗らせた症状持ちみたいになって浮わついた阿呆が放心している状況に、はたと気付いて我に返った時には蓬莱さんは既に目の前に居なかった。人の気配を感じたらしく玄関から外を覗いている。
待ち人来たるということだろう。蓬莱さんが何をするつもりか知らないけれど、六堂は寮生とやらの任務で呼ばれたようだった。急に呼び付けられて、あいつも迷惑だろうから面倒くさい用事はサッサと終わらせて帰るに限る。ついでに先日の微妙な挨拶は俺の気の所為で、今日はすこぶる機嫌が良いと助かるんだけどな。




