浮遊生命体
「神様から妖怪になった方もいるけど、
不思議と力が弱くなる傾向がある。
…路から外れる所為だと考えてるんだけど…。」
「?」
「ごめん、よく解らないよね。
え〜とね…。次郎右衛門さんは、
此処の土地神様と何か契約のようなものを…。
…詳しくは教えて下さらなかったんだけど、
"話相手になるのが儂の仕事"だと仰っていて、
年に二回、そのお勤めをされていた。」
!!…同じだ。
「それ、俺も言われました。」
「あ!待って。…心当たりがあるよね。
けどね、契約内容は慎重に考えた方がいい。
あまり言いふらすと怒る方もいるから。」
「怒る…?」
自分としてはもう怒られた後のような気持ちでいる。
あれ以上に怖いことが起こるのか…。
此処の土地神様は存在が与える恐ろしさに似合わず純粋で素朴な話し方をする。それが不気味で余計に怖いのだ。幼児の様なおねだりをしてくる獰猛な虎が目の前に居る、しかも会話が噛み合わずカタコト、みたいな感じだ。
怒らせたらどうなることかと恐ろしい反面、正体も解らない神様とやらの感情なんて、人が考えた通りのものだろうかと疑問にも思う。さっき蓬莱さん自身が言っていた事だ。解らなくて慎重になるしかないのなら、俺の得た情報はもしかすると貴重で有用かもしれない。協力するつもりでいるのだから何でも話した方が良いはずだ。
「特に、何も言われてないですけど…。」
「先代の次郎右衛門さんがしなかった事は、
一旦、しない方がいい。
…良かった。問題起こすところだったかも…。」
?問題?
こっちの事なんか筒抜けだろう?神様を担ぐことなんて出来るか?お使いや、此処の猫だって土地神様の仲間みたいなもんなんだろう?
「けど、曾祖父ちゃんは連盟に協力してて、
お使いとかを通して交流があったなら、
土地神様は全部知ってるんじゃないんですか?
連盟のこととか、何もかも。」
「そんなに人間のことを知りたがる方は珍しい。
…まずね、さっきの話の通り、
酷いと区別がついてない。大き過ぎて見えてない。
代替わりは、本当に…文字通りの替わり。
酷い言い方だけど、それを想定した方が無難。」
「…大き過ぎて…。」
留奈さんの話と微妙に食い違う。神寄せの次郎右衛門は英雄だったと話したのは嘘なのだろうか…?
…………。
なんか嫌になってきたぞ?
こっちが遠慮したって、もうこれだけ足を突っ込んでおいて何も知りませんでしたとはいかない。自分でもスッキリしないし、引っ張ってきたのは相手なのだから堂々と対話を求めることは間違っていないはずだ。
「あの、この前、近所のお稲荷さんにお参りしたら、
…従姉妹の留奈さんが出て来たんです。」
「…そうね。本当にごめんなさい。」
「で、"次郎右衛門は英雄だった"って言いました。
助けてもらった人達がいるって。」
「そう。その通り。」
「神寄せって、土地神様のお使いを、その…、
入口と出口を使って呼ぶ力で、
何か人助けをするんですよね?
悪いことをしてるわけじゃないのに、
何に慎重になるんですか?」
「………。そうか…。正しく見え方の違いね。
神寄せの方の人助けというのは、
人命救助と言うより…昔の言い方をすると、
悪いモノを祓うことに当たる。
だから信仰と混同するのだけど、
それは実は好ましくないfsの循環や拡散に
fsをぶつけて反応を操作している。
なんとなく、解る?」
「…なんとなく。」
「そういう方法を直接可能にする能力者は、
日本ではfs技能者とか体現技能者と呼ばれてる。
認められていないだけで世界中にいるの。
人格に似た意思を形成する浮遊生命体を…、
あ、表象っていうのは人間にそう感じられる、
くらいのニュアンス。省略されることが多くて、
長いから略すね。…で、その浮遊生命体を…、
アニメなんかで見る召喚術の様に呼び出して、
fsの操作をお願いするのが、神寄せさん。
此処まで、解る?」
「召喚術…。」
「基本的に能力者が動かすよりも、
ずっと自然で後腐れが無い。
…えっとね、後に悪い影響が少ないの。
無理やりな操作は影響を及ぼす。確実に。
人がやるより浮遊生命体の方が別格。
完璧なのはこの国の神様。…神様っていうのは、
どれだけ計算しても何処に形成されているのか、
その拠点…始点が何処にあるのかが、
私達には割り出せない浮遊生命体と仮定されてる。
複雑過ぎたり大き過ぎて掴みきれないの。
その操作は人が想定出来得る範囲を超えてるから、
神様自身から見れば完全ではなくても、
とても文句のつけようもないものなのよ。」
「………。」
えっと…イメージが追いつかない。流石に言葉だけでは、ついていくのが辛くなってきた。




