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変化球


「…何かあったら対応出来ひん。俺が正しい。」


「またそういう…。」


何やら雲行きが怪しい。聞かされている此方は冷や冷やする。頑固に主張するコハダさんから目を逸らすと蓬莱さんは溜息をついた。


「…もう一人会わせたい子がいて、

 関連してるから途中で入れたらと思って。」


「…出た。聞いてない。」


「個別案件。」


「なら個別やが。」


「二人で組ませるアイデアが出てる。」


「上の意思より安全第一やん。

 捩じ込まなアカンほど急ぎなのそれ?」


「機会が無い。ここの許可取りにくいから。

 それに人材不足が否めないのは変わらない。

 せっかくだから私がやる。」


「…先に言ってくれたら良いのに。

 連れて来てぶっ込むつもりやったん?

 そんな急に捕まる?」


「寮生だから問題なし。

 万一捕まらなければ大人しく諦める。」


蓬莱さんは右手でまたスマホを振っている。一言断るとそのまま操作して電話をかけ始めた。繋がった相手の話は一切聞かずに名前を名乗り、"行けます。急いで。"とだけ話して切った。


「帰るんやないの?」


「置いて行けないんでしょ?なら来てもらう。」


「最初からそうしたら。小さい子やないんやろ?」


「寮生は、基本、任務中の単独行動は禁止です。」


「…移動も?」


「当たり前。良い子だから助かるけど、

 何かある度に班長さんに頼むのも心苦しいし。」


「よう言うわ。結局やらせてんやん。

 …二人、知り合い?」


コハダさんがこっちを見て目を合わせてきたから俺に話を振られたかと思って驚いた。当然俺には何のことやら解らない。蓬莱さんは"勿論"と言いながら頷いた。

 …は?え??知り合い??


「なら松尾くん次第かな…。」


「あのね。小羽田さんの動きが読めないから、

 こっちは約束出来ないの、解ってる?」


「そのつもりなら同時で良いでしょ。」


「それが行けるか解らないから苦労するのよ。

 事前にプラン渡して貰えると助かるけど?」


「無理。それなら下調べさして。

 現場入る迄ノープランに決まってるやん。」


「そうでしょうよ。」


「ん?あ、そうか。…今もう解ってんねや?

 凄いな。此処から解るんか…。」


今度は急に感嘆し始めた。何がどうして駄目だったのかも解らないし何が凄いのかもサッパリ解らない。黙って話を聞いているだけの俺にようやくコハダさんが話しかけてきた。


「あ、あのね。この人のやったこと、

 後でやって貰おうと思うんやけど、

 もう一人のトモダチ?と一緒にどう?

 ってこと。テストみたいなもん。」


「…曾孫さんよ。」


「あ。…失礼しました。お悔やみ申し上げます。」


驚いた(二度目)。高校生の自分に対して素直に静かに頭を下げる大人の男の人を初めて見た。


「ごめんなさい。のんびりしてる人で。」


どうやら蓬莱さんの方が上司に当たるらしい。だとすると確かにコハダさんの口調や態度は異常にマイペースだ。かなり自由で傲慢なのに許されている。まさか親子なのか?とも思ったが、苗字も違うし見た感じの年齢差も微妙だから違うはずだ。多分。


「人様のお宅でする事やないんやけど、

 神寄せの方々は好かれるから助かってます。

 …確かに害意は無いかな。血族やから?

 御家族さんはよっぽど大丈夫かもね。」


俯き気味でぼんやりと夢見る様にコハダさんが呟く。何が大丈夫なのか、どこで判断しているのか、相変わらず解らない。ゆっくりと息をつき重苦しい表情で蓬莱さんも呟いた。


「あんまり交流は無かったみたいだけど。」


「どっちやの…。俺はともかく、

 貴重な人材を博打に捧げるつもりですかァ?」


キレ気味だ。静かな割に忙しい人だな。


「だからそんな怖く無いって。」


「そんなん言えるの陰陽師だけ。」


「…はぁ…。難しいなぁ…。」


「蓬莱さんが変化球ホイホイ放り過ぎなんやって。」


「何よ人を我儘みたいに…。」


「言うてるやん我儘……コワ…。」

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