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其処彼処


「…成績良いっけ?」


「知らんよそんなん。そこまでは…。」


「ふ〜〜ん。……。」


成績の良い奴ら同士にはライバル意識があるらしい。文吾中学校を含む学区の中で坂島西はごく平凡な平均点の普通校というイメージであり、それが自分には丁度良いから志望したのだが、受験の時に堀井も志望校が同じだと知って違和感を感じた。有名私立が本命なのかと思ったが、私立は受けないと話した。これにも驚いた。

中学校ではいかにもな優等生だった奴だ。文吾中はド田舎中学校とはいえ学力偏差値はそこまで悪くはない。無理やり力仕事に駆り出される俺と違って計算で教師を手伝いクラス企画を提案し、それをやり遂げ有能であると自ら評価する完成された優等生だった。いや今もそのはずだ。高校に入ったからといって急に人が変わるとは思えない。成績を自慢するような性格でもなく、教師や友人から優秀だとバラされないと気付かない程に擬態の出来る頭の良い人種なのだ。(個人の感想です。)たまたま変な縁が重なっているだけで、接点が無ければ俺も気安く話すことはない。内申点も上々だったはずだから確実にもうワンランク、成績次第ではツーランク上の学校に行けたのだろう。

不自然だから気になって、入学後に同じ教室で見かけたから聞いてみた。言葉を濁していたが、どうやら"兄貴より上にはちょっと…"ということらしい。兄がこの坂島西高校を卒業していると言う。だからと言われても訳が分からなくて思わず何だそれとツッコミを入れてしまった。堀井はいろいろあるのだと前置きした上で"私がそうしたいだけ"だと頑なに言い張った。俺は一人っ子だから解らない。いろいろとは何だろう。兄弟には有ることなのだろうか。

 まぁ、大学進学が前提なんだろうけど…。

将来的な考えとしては最終学歴さえしっかりしていれば良い。もしかしたら費用や交通の問題かもしれない。坂島西は他の高ランク高校よりも文吾町から近くに在る。自転車で通えるから交通費はかからないし、寒冷期に雪が積もっても最悪歩いて通えるのだ。(但し小一時間かかる。)大いに有り得る話ではある。

正直に言うと俺には解らない。どちらがどちらを理由にしているのか。

自分の知らない世界は意外と身近に、当たり前に存在する。留奈さんの件があってから改めて思い返してみれば、入口は其処彼処にあったのだろうなと今更ぼんやり思うのだ。



 大門道雄の対応にはたまに腹が立つ事がある。人を呼び出しておいて言った台詞がこうだ。


「ワリィ。また後でな。」


朝の貴重な時間に人まで使った結果がコレは無いだろ。教室に鞄を置いてわざわざ足を運んでみたら馬鹿を見た。堀井にも謝れよお前は。

「時間無いならスマホ使えば。」


「いや、渡すもんがあるんだけど、

 説明長くなるから、この時間じゃな…。

 てかお前が来るの遅いんだよ。ギリギリやん。」


「………。これが普通やし。」

どうやら俺も悪かった。

「何か知らんけど貰うだけ貰っとく。」


「…なら、後は連盟の人に聞いて。

 これ、ウチの神社の御守りと御札。

 なんか知らんけどウチの親が、

 "お勤めご苦労様です。"だと。」


「…ああ……ふ〜ん…。」

丁度チャイムが鳴り、教室を移動する者と席に戻る者が一時ごった返す教室内で大門が鞄から取り出したのは、学校という場所には不似合いな代物だった。正月の初詣でよく見る御守りと御札だ。しかしこれらはゴリゴリに宗教的な品であるから学校に持って来て良いものか心配になって焦った。かなり怪しいと思う。御守りくらいは大丈夫かもしれないけれど、一応人目をはばかり直ぐに制服の上着の中に隠して周りを警戒してしまった。渡した本人は阿呆みたいにポカンとしている。俺が気にし過ぎだと言いたいのだろう。アホか。気の小さい人間舐めんな。

とりあえず、あまり気にしている奴はいなさそうだ。見られたら何かに入信していると噂されることだろう。御札は流石に普段から持ち歩くようなものじゃない。珍し過ぎるわ目立つだろと頭突きでもしてやりたい気分だ。大門には普通の事なのかもしれないが。

「じゃ。」

俺も急いで動く。クラス担任はまだ来ていない。


「ああ。ウチの親、気にすんなよ。」


「何?」


「勧誘じゃないんで。」


「…はは。」

乾いた笑いが出た。大事なことは最後に言うタイプか。




 蓬莱さんが家に来たのは、その日の夕方の事だった。俺が帰って来る前から祖父ちゃん祖母ちゃんを相手に何やら話をしていたらしい。


「お父さんお母さんには話させて貰ったけど、

 お祖父ちゃんお祖母ちゃんにはね、

 ちょっと…ご理解頂けてるか分からない。」


祖父ちゃん祖母ちゃんに何を言われたのか蓬莱さんは困っていた。同情を禁じ得ない。あの二人は手強すぎる。唯でさえ自分には無い他人の感覚を、理解なんて簡単に出来るもんじゃない。そんな事が可能なら、あらゆる差別は論破出来る。それでも無くならないのであればマウントを取りたい側が、それをしたいだけなのが明白になることだろう。…理屈ではそうなるはずだ。馬鹿みたいにシュールだけど。

父さんはまだ仕事、母さんはパートの時間だ。蓬莱さんは恐らく母さんとそんなに歳は変わらないくらいだと思う。留奈さんとはよく似ている。つまり御使いの狐さんが、よく似せて化けていたわけだ。髪を茶色に染めて伸ばしているのだが、見る度に髪型が違う。前見た時は確かパーマをかけてはいなかった。多分。

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