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後の祭り


 俺が体育祭の実行委員を引き受けたのは、てっきり中学校とさして変わらない業務だろうと勘違いして舐めてかかったからだった。結論から言うと、似て非なるものだ。拘束時間がかなり違う。そしてその実行委員に俺を引き入れようというのが、この時の堀井の狙いだったのである。まるで罠に掛かった気分だ。今だから理解出来る。堀井には西高を卒業した兄が居るのだ。坂島西高校がどういう学校か、高校の体育祭がどんなものかをアイツはちゃんと知っていたと思う。

各クラスから一〜二名という曖昧な招集をかけられた体育祭実行委員会は、主に立候補者で成り立っている。(男女別競技等がある為、一人でやるか男女各一名選出するかの判断は学級に任される。)勿論、ジャンケンやあみだくじで選出されたついてない委員も中には存在する。俺はむしろそういうケースが多いと想像していたので、予想以上にしっかりした活動内容に驚いていた。

生徒会の下で機能しているからには何をするにも決議を待たなければならない。中学と違って全ての運営が生徒会を中心とした生徒自身の考えで行われる。意見があるのなら会議で発言したら良いのだけど、待つだけになりがちなのは自分達が一年生だからだ。例えばプログラムは大筋で例年通りの進行と説明されたが一年生にはそれが解らない。演目や順番を聞いたところで状況が想像出来ないのだ。殆どの場合、ただ話を聞いているだけ、覚えるだけになる。その分、大して責任も無いから楽と言えば楽だ。会議にはクラスの代表者一名が参加すれば良いのだが、これがどうも堀井にはネックであったらしい。西高ブラスバンド部は野球部に次いで厳しいことで有名だ。つまり、体育祭の練習や本番には実行委員として活躍したいが、主に放課後に行われる打ち合わせや会議には部活動が重なる為に出られない。そこで堀井は考えた。俺にやってもらおうと。実際はアイツのことだから、活躍したいなんて夢みたいな理由ではないだろう。考える奴は考えるものだが、生徒会実行委員経験者の肩書きが成績に、ひいては大学受験に影響することをよく解っているのだ。しかし部活動と委員会の両立が難しいことに気付いた堀井は、体育祭に於いては委員が各クラス二名まで入れるシステムに注目した。もう一人の存在を利用しようと考えたわけだ。

文吾中学校にも体育祭実行委員は存在した。同じ実行委員という名前を聞いて、まぁ中学の時のように指示された通り動けばいいだけだろうと想像した俺はあっさりと安請け合いし、まんまとそれらの会議に出席させられているのである。これが恐らく今年に限って妙に溜まっている、この疲労の原因だ。委員会活動に大した運動要素は無いから身体的には部活動に参加しているよりも遥かに楽をしているはずなのに、ぐったりと疲れる。もしかして俺はメンタルからくる疲れというものを初めて経験しているのかもしれない。

野球部とブラスバンド部の人間は特別扱いされるのがどうやら我が坂島西高校の伝統であるらしい。二人いる実行委員のうち一人がブラスバンド部ならば、もう一人がフォローするのは当然の様に周囲からは思われている。気に入らない。だったら両方に所属するなんて欲張るなと言いたくなる。てか、だいたい不公平だ。俺だって部活動に参加したいに決まっている。話を聞いているだけの会議なんかよりもバドミントンをやっていたい。バト部なら休んでも構わないというものでもないだろう。勝手に序列を作ってんじゃねぇよ。…などと次から次へと湧いてくる文句をタラタラぶち撒けて噛みつこうにも、春の選抜まで気の抜けないブラスバンド部に比べればインターハイを終えたバドミントン部に余裕があるのは事実だし、よく知りもしないのに安直な考えで引き受けたのは俺自身である。すべては後の祭りなのだった。

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