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自由時間


 寒い。自由時間が勿体ないから、部活動が終わると直ぐに自転車を走らせ長く緩やかな登り坂を立ち漕ぎして帰ってきた。やっとの思いで着いた家に上がるなり荷物と上着をそこら辺に投げ捨てて居間のソファで涼みつつ休んでいたら、今度は寒くなってきた。当然ながら扇風機のせいだ。こんな時季に夜まで回すものじゃない。仕方なく立ち上がると重たい足で歩いて電源を切った。重いというか、じんわりと痛い。足が痛むのは昔から偶にある事だ。珍しくもない。珍しいのはこの過ごしやすい気温の季節に暑くなったり寒くなったりしている自分の日々の生活リズムだ。

高校では思い切りやりたい事をやってやるのだと決めたはいいが、どうも張り切り過ぎて実際少ししんどい。バイトも含めて、神寄せに関係する用事が余計なだけで、運動部の人間は大体が同じ様な高校生活を送っている筈だ。皆疲れないのだろうか。俺だけがだらしないのかと思うと嫌になりそうなので前向きに考える。疲れない人間なんていない。休む時間が無いのだ。兎に角時間が足りない。希望した通りに充実しているのは間違いないのだけど、平時を充実させると行事が立て込んだ時に忙しいわけだ。当たり前の事なのに想像力が足らなかった。てか何でこんなに秋にイベントを詰め込んでいるのだろう。いや冬もか。学校行事が一年の後半に偏るのは成果を披露する為だろうから、自然な流れなのかもしれない。理由は解る。解るけれどイザやってみると尽く調整が難しい。教師や運営側に言われるがままに行動してきた中学校での文句や不満は自分に責任を感じなかったからこそ言えたもので、自分達で決めたものならそんな事は出来無い。充実した高校生活をバランス良く設計するのは意外と大変だ。初心者には熱量の加減も割り振りも難しくて目眩がする。何を何処までやるのが正解なのかが解らない。


「あ、なんや、おったの?」


聴こえた声にギクリとした。廊下に続くドアの方をチラリと見れば予想通りに母さんが不思議そうな顔をして立っていた。確かに不思議かもしれない。よく見たら俺は扇風機の前で胡座をかいて座り込んでいた。こんな時間に何をやっているんだろう、暇なのかな、くらいに思われてもおかしくはない。今日はパートが午後からだから遅くなるとは聞いていたのでダラダラしていたのだが、もうそんな時間になっていたのかと時の過ぎゆく速さに大袈裟でなく驚愕する。同時に上着や鞄と一緒に床に置いてそのままにしていた弁当箱を思い出した。母さんの呆れた様な態度から、もう見つかった後だろうと推測出来る。時間はあった筈なのに、これは少し気まずい。


「ご飯用意するから、風呂先に入りなさい。」


「わかった。」

お咎めなしだ。ラッキーな事もあるものだと油断したら、母さんは黙って弁当袋と水筒を持って行ってしまった。

「後でやろうと思ったのに。」

後ろ姿に声を掛けたけれど、振り返りもしないで返事だけが聴こえる。


「今日はいいから、代わりに風呂やっといて。」


そういうことか。

「わかった。」

風呂の浴槽を軽く洗ってお湯を張る作業は母さんには面倒臭いものであるらしく、頻繁に家事の交代を持ちかけてくる。俺は弁当箱を洗う方が面倒なタイプなので代わってくれた方が助かるくらいだ。何時もと違って嫌味の一つもないのが変な感じすらする。パートの時間が遅くなった時に機嫌が良かったことなど今迄無かったと思う。

疲れて気が回らなかったけれど、やっぱり今日は変に周りの人間が自分に優しい気がする。もしかしたら何かの形で疲れが表面に出ていたのかもしれない。八つ当たりのようなことはしていない筈だが、元々の目付きが悪いせいで眠いだけで怖がられたり睨んでいると勘違いされるのだから無意識に威嚇になっていた可能性もある。…知らん。自分ではそんなもの気付けないし分かるわけがない。過ぎた事は仕方がない。取り敢えずゆっくりと風呂にでも浸かってサッパリしよう。

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