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将来


 いつもの通りに森川の父さんと母さんが居て、順番を待っている人と偶に話をしながら動いている。会話と人の動きがほんわりと温かい空気を作る。こういうのが好きか嫌いかで人は結構分かれると思う。俺は嫌いじゃない。けど得意でもない。俺には出来ないと思うからだ。何がどうとは上手く言えないけれど、凄いと思う。


「いらっしゃい。ちょっとだけ待って貰える?」


「はい。」

いつもと変わらず森川の母さんは元気で明るく声を掛けてくれた。森川の父さんは軽快にハサミを鳴らしている。これもいつもの事なのだけど、刃物を扱う職人の技術は思い切りが良くて今だにちょっと怖い。小さい頃はビビって避けて注意されたりしたものだ。かえって危ないやつである。

取り敢えず勧められるままに椅子に座って以前と変わったところを確かめていた。B5サイズくらいの写真達は、モノクロのヘアモデルが減ってカラーの高級外車が加わったことで全体的に賑やかになった印象だ。統一感のあったものが混沌としてきたとも言える。俺は好きだからいいけど。

 …多分メーカーの中で一番好きなやつだろうな…。

飾ってある写真から森川の父さんの性格を想像してみるのも面白い。どれもレトロ感は見当たらない。見る限り王道のロマンチックな派手好きだ。いや、全然良いと思っている。普通にかっこいい。

 棚に並んだ漫画雑誌を引っ張り出して読んでいる合間にこれから先のことを考えた。課題はまだ残っている。時間がある時に留奈さんから詳細を聞いて氏神様なる存在と話をしてこよう。この間の蛇にまつわる話をしてみたら何か感想?でも言ってくれるかもしれない。それが俺達にも何かのヒントになる事だってあるかもしれない。あまり期待は出来なくても、やってみる価値が無いとは言い切れないだろう。俺にしか出来ないなら、俺が色々と考えた分だけ何かが変わる可能性があるということだ。そう考えると面白い。正直、無理矢理にでも面白く考えないと、ひたすら嫌なだけで憂鬱になってしまう。


 聞き覚えのある話し声が聴こえてきたのは十分程待ってからだった。どうやらさっきカットを終えて出て行ったお客さんと外で立ち話している。金髪の若い男性だったので怪訝に思ったが、維君の友達ということも考えられる。店の中に入って来るのかなと入り口の方を見ていたらドアが開いた。コンビニでもそうだったが、デカいとこういう時には目立つ。


「おお。マツやん。久しぶり。」


「おぅ。…あれ?髪伸ばしたんやな。」

俺も高校に入学するにあたり自転車を新しくしたので店内に入るまで気が付かなかったようだ。森川は中学校を卒業したことで晴れてスポーツ刈りからも卒業出来たらしく、新しい髪型はサラッとしたセンター分けになっていた。お前、髪の毛サラサラやったんやな。知らんかった。

「いつの間にか、ここ内装変わったな。」


「ああ、俺が好きなもん飾りたいって言って。」


「え?お前の!?」


「うん。…後継ごうかと思ってさ。」


「…へ〜、ヒロが…。」

何となしに森川の母さんの方を見ると、口元に笑みを浮かべて嬉しそうだ。なんか知らんが、良かった。

「外車好きやっけ?買うんか将来?」


「買えるかよ。

 けど見てる分にはかっこいいやん。」


「あ〜、まぁな。わかる。」

さっき写真から分析した性格は外れたのかもしれないが、あながち間違ってもいないのではないかとも思う。森川は確かに落ち着いた。色々あって、何と言うか、物静かになった。だけども俺はしつこく覚えている。あれは小学校の低学年の頃、フェラーリに乗ってエンジン吹かしたつもりになって教室中を走り回り、何度も先生に怒鳴られていたのも同じ森川なのだ。

フェラーリ、ランボルギーニ、アルファロメオ…。

やっぱり中身はあの森川なのだと思っている。




     〜第二章 「夏の蛇」 終〜

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