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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第四章「妖精神の傘の下」
71/105

71 運搬中……

 俺たち二人を担ぎ上げたまま、謎の人物は通りを進んでいく。

 青い粒子が軌跡を描いているのもあるのだろうが、子供二人を両肩に抱えているわけで。

 そりゃあもう街の人々の注目を集めている。


 向かい合って担ぎ上げられたおかげで、追い越した人々の表情が良く見える。街の人々がギョッとした表情でこちらへ釘付けになっているのが良く見える。少し妙なのは、そのうち何人かがこちらへ向けて手を振っていたことだ。


 誘拐かなにかに見えそうなものなのに、どうも好意的に見られているような気がする。アーネスもそれに、気付いたのだろう。


「あんた一体何者だ?」

「ふむ、それについてはあとで教えよう」


 彼は一瞬、俺の方へ目線を送って顔を見合わせると、意を決したように呟いたものの、帰ってきた言葉は受け流すような一言。反対側の肩から覗く表情が、ムッと険しくなったのが分かった。


 まあ、ぶっちゃけ親切じゃないよな。

 これだけのことをしておいて、何も知らせてくれないなんて。

 秘密主義は過ぎるといらない事故を呼ぶんだぞ、全く。


「今は、君たちのことを教えてくれ」

「え、ええ……?」


 まあ、移動中の話題にはちょうどいいかもしれないが、自分から言うのはちょっとはばかられるな。仮にも俺は女の子なわけだし、変な情報を与えて、後から悪用されては困る。正直、現状この人が信頼できる人なのかすら、確認できていないわけだし。


「例えばその髪、君はダイアーの親戚かな?」


 む、その名前を知っているということは、あなたもうちのパパの知り合いか。ていうかそもそもリーラントの知り合いっぽいし当たり前ではあるか。でも、うちのパパは有名人だからな。存在を知っているだけで、面識があるわけじゃないかもしれない。


「実は私もそうなんだ」

「……えーっと」


 じゃあ信頼できるな! とはならないんだよな。

 現代日本の若者なら、小学校の防犯講習で習ったはずだ。

 知らない人に自分の事を教えちゃいけませんって。

 父親の親戚を名乗るとか、よくある誘拐の手口じゃないか。


「ご、ご兄弟さんとかですか?」


 まあ、とは言ってもあんまり疑ってかかるのも可哀想だし、会話くらいは続けてみるか。周囲の反応を見る限り、この人もなかなかの有名人っぽいし。あるいは、特徴的な白フードをかぶっているから、そういう組織に属する行政の人とかかもしれない。


「兄弟? そう見えるかい?」

「わからないですけど、年は近そうな気がします」


 中性的な声から察するに、年齢的にはまだまだ若そうだ。ダイアーより上かはわからないけれど、少なくとも十代か二十代ではあるだろう。


「ふははははっ」

「え」

「いやあ、ごめん若く見られたのがうれしくてね」

「あ、ああ……」


 ひょっとしてこの人アレか?

 ファンタジー式老化遅延術を身につけているタイプの方か?

 見た感じ、妖精には見えないけど、似たような種族の方かもしれない。


「やっぱり君、ダイアーの娘だろう?」

「えっと……」


 しまった、言葉に詰まってしまった。

 これじゃほとんど肯定しているのと同じじゃないか。


「反応で分かるよ。うわさも聞いている」

「そうですか……」


 まあ、バレてしまったからにはしょうがないか。

 別に隠したいわけでもないしな。


「だったら尚更、この事態は見てもらっておいたほうがいいね」

「……ほう?」


 なんだか、ずっと続けて意味深なことを言う方だな。

 別に、自分の目で見たわけではなさそうだけど、ひょっとしてこういう襲撃は、王都にとって日常茶飯事なんだろうか? わからないけれど、ひとまずこの人がいい人であることを祈るしかなさそうだ。


「なんか俺、いないことにされてないか」


 アーネスが不機嫌そうにそう呟いたところで、城壁の門が見えてきた。

 門は既に、開いている。

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