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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第四章「妖精神の傘の下」
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62 びっくりドッキリロイヤルキャレッジ

お久しぶりの更新です。

かなり間が空いてしまいましたが、これからぼちぼち再開していきます。

よろしければまたお付き合いください……



 さて、俺が7歳になったということは、忘れちゃいけないことがある。

 俺の幼馴染にして、結局唯一の友達となっている、アーネスのことだ。

 当然ながら、アーネスとダイアーの約束は特に覆されたりしていない。

 つまり、俺が今日入学式であるなら、彼も今日がそうであるわけで。

 せっかくなら一緒に行こうぜ! と、先日約束しておいた。


「アーネスー、迎えに来たよー!」


 というわけで入学式当日、アーネス宅の扉をノック。

 そのまま声を上げて、彼を呼んでみる。

 幼馴染の女の子が、わざわざ迎えに来てやったんだ。

 早く顔出さないと勿体無いぞー。


「……ほんとに来たのか」


 ドアが開いて赤髪がひょこり。

 アーネスは一言、そんな悪態をくれた。

 うんうん、いつも通りでよろしい。

 今日はすっごい眠そうだけど。


「当たり前でしょ? 置いていくわけないじゃん」


 なにを疑っているんだ。

 俺がそんな白状な奴に見えるのか。

 たしかにここ数年でアーネスをからかうようなことは数十回くらいあったかもしれんが。

 笑えないいたずらはしない主義なんだからな。


「いやだって……まだ朝日も上ってないぞ」

「それはそう」


 いや全くもってその通り。

 俺だってこんな早朝に出発するとは思っていなかった。

 なんかこの世界、別に時計が無いわけじゃないっぽいんだけど、少なくとも我が家に出発時刻を伝えるような文化は無いんだよな。

 一般的な村人が、時計を持っていないからだろうか。


「まあいいや、準備するから先に行っててくれ」

「え、いやそれはちょっと」

「なんでだよ。そっちのほうが楽だろ」


 いやまあ、俺もそう思うけど、そうもいかないというか。

 説明しづらくて微妙な表情をしていたら、目の前のアーネスも首をかしげてしまった。

 結構成長したように見えるけど、こういうところはまだ子供っぽいな。

 まだ9歳だから当たり前だけど。


「まあ、少し出てみれば分かると思うよ」

「ええ? 一体なんだってんだ」


 不機嫌そうに俺の横を通り過ぎるアーネスを横目に、俺の方はといえば、申し訳ないことをしているなぁと思ったりする。

 まあさ、一応アーネスにも迎えに来るとは言ってるんだけどさ。

 俺の後ろを見たら、何て言うだろうか。


「……は?」


 まあ、そういう反応になるよな。

 この村じゃお目にかかれないような銀の細工に、真っ白で高級感のある木材。

 そんでもって、頼むから真鍮製であってくれと願いたくなるような金の車輪。

 極めつけには、車体の端々から突き出す真紅のバラ。


「えーっと……見ての通り。こんな感じのお迎えさんが、来ちゃったんだよね」


 まさか、孫の出迎えにこんなものをよこすとは。

 俺は正直、長年の謎だったフリフリフリルの訳が分かったような気分になっているが。

 アーネスの方は、全くこういうのに耐性なさそうなんだよな……


「……帰る」

「ちょっと待って!」


 唐突に閉じそうになった扉の間に、身を割り込ませはしたものの。

 まあ、そうもなろうというものだ。

 俺だって、正直だいぶ恥ずかしい。


***


「びっくりドッキリロイヤル、豪華で絢爛すぎてるチャーリオッツ」

「なんだそれ」

「なんでもない。ただ頭に浮かんだだけ」


 ふざけていたら、となりのアーネスからツッコミが入ってしまった。

 しかも馬車ならキャレッジだし。

 まあそんなことはどうでもいいんだ。

 問題はこのリムジンの中みたいに息苦しい空間をどうするかってことだな。


「レーダは馬車に弱いんだったかな」

「酔い止めの薬飴があるから、苦しくなったら言ってね」

「ありがとう」


 両親の言葉が暖かいが、でもなんだろうな。

 馬車酔いを覚悟していた割には、そんなに気持ち悪くはない。

 車体が良いって言うんだろうか、ただ進んでいるだけでも、かなり楽に感じるのだ。


「中から景色が見えるって変な気分だ」


 アーネスの何気ない呟きで、俺も気付いた。

 そういえばこの馬車、窓があるんだよな。

 幌馬車でも外が見えないことは無いけど、こないだ王都に来たときは一番奥の席だったし、身長が足りなくて風景も見れなかった。

 そう考えると、中々新鮮な気持ちだ。


「レーダも、気持ち悪くなったら、外を見るといいわ」

「うん」


 そうだな。前世の俺の、そこまで多くは無い乗車経験もそう言っている。

 流石に窓を開けて風に当たるとかはできないかもしれないが、母上の知恵袋には大人しく従うべきだろう。


「ところで、ママはこういうの慣れてるの?」


 そういえば、ミナやダイアーは今回のことに、あまり動じていないように見えた。

 俺はお家の事情はあんまり知らないが、ぶっちゃけこれは普通なんだろうか?


「慣れはしないけど……まあ、いつものことね」


 馬車を出してくれてるのは、ミナの実家だって話だし、ミナも同じような馬車に乗ったことは、幾度となくあるんだろう。

 まあ、元々良いところのお嬢様だって話は聞いてたけど、ここまでとはなぁ……

 いつかは会いに行くとは言え、ちょっとだけ不安だぜ。

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