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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
間章「なんでもないおはなし」
59/105

59 エッ!?

「ごちそうさまでした」

「おう。じゃあ片付けるからちょっと待っててくれ」


 一品とはいえ、随分急いで食べてしまったな。

 レーダちゃんのちっちゃなお腹に、負荷をかけてないか心配だぜ。

 まあ、だいぶ優しいお味だったから大丈夫だと思うけどね。


「それで、なんだったか」

「うん?」


 しばらくお腹をさすっていたら、アーネスが戻ってきた。

 なんだってそりゃ、お菓子のことだろうけど。

 なんかちょっと、不器用なお父さんみたいで面白いな。

 ちょっとからかってやるか。


「はて。なんだったかなぁ」

「……まあ、別にいいけど」

「ごめんごめんちゃんと覚えてるから」


 ちょっと調子に乗っただけなんだ。

 ちゃんとお菓子あげるから。

 だからそんな、本気で悲しそうな顔しないでくれ。

 このフリフリフリルの腰部分についた、外出用ポーチに入ってるから。


「はいこれ」

「これは?」

「飴だよ。家族と一緒に作ったんだ」


 そうして俺は、レーダちゃん特性薬飴の包み紙を差し出した。

 効果は食べてみてからのお楽しみだ。

 ……いや、そういえば俺、本当にミナから効果聞いてないんだよな。

 食べて大丈夫なのかな、これ。


「どうした? じっと飴をみて」

「いや……うーん。いや……」


 流石に毒味したほうがいいか?

 いやでも、ミナが包んでくれたのは1個だけだからな。

 残りは家においてあるけど、今から帰って取りに帰るのもな……


「もったいぶるなよ。そら」

「あっちょっと!」


 俺がもたもたしていたら、アーネスが包みを解いてしまった。

 そのままひょいと飴玉を拾い上げて一口。

 まだ安全かどうかわからないのに!

 ……いやまあ、ミナも子供に変な薬持たせたりしないと思うけどさ。


「うん?」


 ていうかなんだ?

 包み紙の裏に、何か書いてあるな。

 これが説明なんだろうか。

 多分これは、ミナの字だとは思うけれど……


『レーダへ。間違ってもアーネスくん以外に食べさせないでね。お母さんより』


 なんだこりゃ。説明になってないぞ。

 アーネス以外に食べさせちゃだめなものを、アーネスには食べさせて良い理由がわからない。

 アーネスにだけは効かない、なんかの毒でも入ってるんだろうか。

 なわけないか。


「アーネス。何か変なことになってない?」

「ンー?」


 当のアーネスはといえば、目を細めながら飴玉を転がしているようだ。

 時々頬が、飴玉の形に膨れるからわかりやすい。

 今のところ、変化はない。


「トクニナントモ……エッ!?」

「えっ!?」


 なんてことだ。

 アーネスの声が、個人情報に配慮した加工音声みたいになってしまっている。

 緩い雰囲気のマスコットが主役のアニメで、唯一喋るやつみたいな声になっている。

 わかりやすく言えば、めちゃくちゃ高くなっている。


「ナンダヨコレ! フザケンナ!」

「ぶっ……ふふちょっと……ちょっとまって」


 やばい。めちゃくちゃ面白い。

 全身で癇癪を表現しているのに、声が高すぎて面白い。


「ナニワラッテンダ!」

「うふふっ……ちょ、ちょっとしゃべんないで」


 まずいぞ、ツボに入った。

 腹筋が痛い。口のはたが攣りそうだ。

 ちょっと面白すぎる。


「コッチハシンケンナンダゾ!」

「うははははっ!」

「コノヤロー!」





 かくして俺は、唐突に訪れた地獄にしばらく苦しまされるようになった。

 あとからミナに聞いてみたら、あの飴には変声剤という特殊な薬を練りこんでいたらしい。


 本来の用途とはかけ離れているけど、笑えたでしょ?

 とはミナ本人の言葉である。

 なかなか笑いに本気を出すタイプの方らしいね。


 ちなみにアーネスの声は3分くらいで元に戻った。

 効果時間一日とかじゃなくてよかったね。アーネス。

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