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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第三章「四歳の夏」
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37 神様の力


「いやあ、なんだかんだ、こうやって二人きりっていうのも久しぶりだねぇ」

「う、うん……」

「大丈夫だよレーダ。何かあったら絶対に守るし、リーラントの方にも伝えられるから……」

「うん。それはいいんだけど……」


 実際のところ、心配はしていない。

 ダイアーは頼りになるし、彼がいれば滅多なことは起こらないって信じてもいる。

 久々に一対一で話せるのが、ちょっと嬉しいのも事実だ。

 でも、そんなことより気になることが……一つある。


「パパ、なんでそんなに光ってるの?」


 今のダイアーは全身が発光しているのだ。

 淡い光なんてものじゃない。

 ダイアーを中心とした半径20メートル程度が照らされるくらいビカビカである。

 不思議なことに、眩しくはないんだけど、死ぬほど気になる。

 いや、確かにいつか見たヤツではあるんだけどさ……


「ああ、これかい? これは日神ハイロウの力だよ」

「ニッシンハイロウ?」


 初めて耳にする言葉だ。

 新作のカップ麺とかではないだろう。

 文脈的に、神様の名前かなにかだろうか?


「黎明神より分断されし日神ハイロウ……なんて言っても、分かりづらいと思うけど、まあ簡単に言ったら、神様の力を借りたのさ」


 俺がなにそれって感じの顔をしていたら、ダイアー先生の解説が入った。

 そう言えば、アーネスたちと別れたあと、ダイアーは何かを呟いていた気がする。

 なるほどなるほど、これがいつかリーラントが言っていた、妖精歌じゃない精霊歌ってやつか。


 ただ、神様の力を借りるって、大層な言い方だな。

 ファンタジーものならお約束だけど、ダイアーもそういうのできるのか?


「ひょっとして、パパってそのハイロウって神様の神官だったの?」

「間違ってはいないけど……少し違うかな」


 気になって質問してみたら、絶妙な答えをもらってしまった。

 まあ、見るからに本業は狩人だし、敬虔に何かに祈っているところなんてみたことないけどさ。

 とりあえず、黙って続きの言葉を待とう。


「パパが信仰しているのは、日神じゃなくて黎明神さまさ。今はもう、いなかったことにされているけどね」

「……」


 うーん……また知らない単語。

 アーネスのおかげで、このあたりの地理には詳しくなれたけど、信仰についてはまだまだ全然なんだよな。

 いつかは調べようと思っていたけど、早めに知っておいたほうがいいのか?

 でもあれ、固有名詞が多くて大変なんだよな……


「また今度、詳しく聞かせて」

「もちろん。なんだったら、まだ本にしてない冒険譚を語ってあげよう」


 それは頼もしいな。

 勉強の始まりは、人から聞いてしまうのが一番だ。

 俺もダイアーの冒険小説は全巻追っているから、あれに絡めてもらえれば覚えやすいだろう。


「そして……目的地についたみたいだね」

「え? もう?」

「ああ、海の中だ。手早く僕が何とかすることもできるけど、どうする?」


 海の中だって……すぐそこにガーディアンとやらがいるのか。

 の割には随分余裕だな。


 いやまあ、うちのパパなら余裕なんだろうってことはわかるんだけどさ。

 こういうのってもっと緊張感持ってやった方がいいんじゃないか?

 そんなんだからリーラントから苦言を呈されるんだぞ。

 ま、そういう安心感あるところが好感持てる部分でもあるんだけどさ。


「リーラントに連絡はとれるんだっけ」

「うん。流石にアーネスくんごと呼び寄せることはできないけどね」


 そう言えば、リーラントは一応呼ぶだけでワープできるんだよな。

 流石にアーネスごとは無理か。

 でも、あっちもあっちで何かあるかもしれないし、連絡だけでも十分だろう。


「じゃあ、とりあえず連絡をお願い」

「わかった」


 俺がそういうと、ダイアーは虚空を見つめて何かを呟き始めた。

 精霊歌を使っているんだろうけど、傍から見るとシュールだな。

 ひょっとして、本当にテレパシー的な何かも使えちゃうのか?

 うちのパパ、本当に底が知れないから判断着かないんだよな……


「あらあら、随分慎重だねぇ」


 ふと、ダイアーから目線を外していたら、背後からそんな声がした。

 咄嗟に振り返ると、少し離れた位置に、何かが浮いているのが見える。

 それは……人の形をしていた。


「あなたは……さっきの」


 スーツ姿の小さな男の子。夏の妖精。

 姿が見えないとは思っていたけど、ついてきてたのか。


「慎重なのはいいことさ。致命的な事態は、大体そうやって回避することができる」


 妖精は口元に笑みを浮かべ、こちらに近づいて来ながらそう言う。

 不気味なやつめ。

 何に浸ってるのか知らないけど、気持ちの悪い男は嫌われるぞ。

 金髪美少女レーダちゃんが思うのだから、間違いない。


「でも、こういうのは想定できてたかい?」

「え?」


 こういうのって……どういう?

 そう思って、咄嗟に周囲を見渡して、気付いた。


「パパ……?」


 いつの間にか俺の周囲には、とんでもない濃霧が立ち込めている。

 少なくとも見える範囲に、ダイアーの姿は見当たらない。


「妖精に不用意に近づくなって、さっき教わったばかりなのにね」


 そっちから近づいて来たくせに、よく言うな。

 だけど……認めよう。確かに今のは俺の迂闊だ。

 コイツが近寄ってきた時点で、距離をとるべきだった。


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