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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第二章「赤目のスエラ」
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21 お風呂待ちのひと時


 五歳の夏、友達ができた。

 友達の名前はレーダ。

 今日初めて会ったばかりの変な奴だ。


 いきなり声をかけてきて、あとを追ってきて、耳元でささやきだして、俺を家に誘って。

 いきなり俺と友達になりたいと言い出した、嵐のようで、変なヤツ。


 俺は今日、そんな変な友達の家に泊まることになった。


「お湯を沸かしたよ。順番に入ってくれ」


 この家の家主は、ダイアー・ハイマンだった。

 人との繋がりを持っていなくても、春歌の狩人のことくらい、知っている。

 俺とダイアーは、村の有名人だからな。


 ダイアーと俺は、お互いの噂を知っていた。

 ダイアーが、レーダの前で詳しいことを話さなかったのは、きっと優しさなんだろう。

 噂を知った上で俺をかばうなんて、とんでもないお人好しだ。

 レーダはそんな、春歌の狩人の娘らしい。


「アーネス。先に入る?」

「いや、俺は後でいい」


 もう少し考えごとをしたいので、断っておく。

 そうだ、こいつはまだ、俺のことを詳しく知らないから、友達になってくれただけかもしれない。

 本当の俺を知れば、突き放してくるかもしれない。

 ああ、仕方のないことだけど、それは嫌だな。


「そっか、じゃあ、終わったら呼びに来るから!」

「分かった」


 どうすれば、レーダに嫌われずに済むだろうか。

 俺はもう、友達をなくしたくない。

 あるいは、知られてしまわないように頑張らないといけないのかもしれないけど、多分無理だ。

 一体どうすれば、レーダの友達でいられるだろうか。


「じゃあそのあいだ、ノエルとあそぼ!」

「ダメだ。お前とは遊ばない」

「えー! なんで!」


 少なくとも、このノエルとかいうヤツと、仲良くなってはいけない。

 妹さまには悪いが、それは譲れない。

 不満だろうけど、理由ははっきりしてる。


「お前のために、俺はお前と仲良くならない」


 俺は、女の子と仲良くなってはいけない。

 俺はもう二度と、女の子を特別に思ってはいけない。


「なにそれ! いみわかんない!」


 だろうな。

 でも、俺だって説明したくない。

 同性の友達相手ならともかく、女の子に説明するわけにはいかない。

 だけどまあ……


「どうしても知りたいなら、後でレーダから聞いとけよ」


 レーダには話しておいてもいいだろ。

 あいつとは、そういう話もできる気がする。

 まだ会って1日だっていうのに、俺もチョロいな。


 ……ああ、でも、これはいいな。

 妙に声が高いから、最初は避けたけど、レーダを突き放さなくてよかった。

 男友達(・・・)ができるって、こんなにいい気分だったのか。


***


 小屋の裏手の、掘っ立て小屋。

 大桶に張られた湯船につかって、身体を温める。

 

「ああ~」


 いい湯加減だ。

 本当にダイアーはなんでもできるな。

 狩人を辞めても、職にあぶれることはないだろう。

 まあ、狩人以上にかっこいい肩書はなかなかないかもしれないけど。


「それじゃあ、僕は夜の見回りに行ってくるよ!」


 小屋の壁越しにそんな声が聞こえる。

 こんな夜中に見回りなんて、ダイアーも大変だな。


「いってらっしゃい! 気を付けてね!」

「ふふふ、行ってきます!」


 壁越しなので大声でやり取り。

 こういう家族のやり取りっていいよな。

 きっと、こういうのが後からいい思い出になるんだろう。


「ふぅー……」


 深く湯船につかったら、おっさんみたいな声を上げてしまった。

 ま、どんなことでも、金髪美幼女がやってると思えば可愛いだろ?

 俺の身体はまだまだ未発達だが、ミナ直伝のお肌ケアも欠かしていないからな。

 美幼女、美少女、美女、美魔女って感じに、生涯美しくいてやるぜ。


「でも……そろそろかな」


 身体も随分温まってきた。

 そろそろ交代しないと、アーネスに文句を言われるかもしれないな。

 ノエルも、ミナと一緒に入る前に寝てしまうかもしれない。

 そろそろ、上がっておくべきだろう。


「ああ~」


 立ち上がって、小屋の中の空気を浴びる。

 今夜は少し肌寒いが、風呂上がりにはこれが心地良い。

 とはいえ、あんまりすっぽんぽんでいると風邪を引いてしまうな。

 さっさと着替えよう。


 今日のパジャマは、特別に水色のフリフリフリルだ!

 昼間とは打って変わったファンシーな服装で、アーネスの度肝を抜いてやるぞ!

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