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今世の俺は長女だから  作者: ビーデシオン
第二章「赤目のスエラ」
19/105

19 これも友達作りのため

今回はちょっと短めです

 説明しよう! スエラとは!

 一度死を経験しつつも蘇生し、幸運なことに、グールになることもなかった人間の総称である!

 つまり俺と一緒だな!


 ちなみに、死人を無理やり蘇生したら、普通はグールっていう食人鬼になっちゃうらしいぞ!

 あと、大抵の場合、変な身体特徴が現れちゃうらしいぞ!

 ちっちゃい角が生えるとか、目が赤くなっちゃうとかな!


「パパ……?」

「言いたいことはわかるけど、後で聞くよ」

「そっか」


 ダイアーがなぜあれほど謝っていたのか、理解できた。

 そうか……俺もしかしたら、バケモノになってたかもしれないのか……

 ……まあ生きてるからいっか!


 とは言え、スエラについて質問してしまったせいで、いろいろごちゃごちゃしてきたな。

 ここは一度、話題を戻そう。


「それはそうと、なんで本なんて盗んだんだ?」

「盗んだわけじゃない! 借りただけだ!」

「はいはい、じゃあなんで借りたんだ?」

「……」


 ありゃ、黙ってしまった。

 うーん、やっぱり男口調はやめるべきか?

 フレンドリーな方がいいかと思ったけど、かえって威圧感を与えてしまっているかもしれないな。

 よし。今後人前では、できるだけ女の子っぽい口調でいこう。


「こほん……ごめんね? 怒ってるわけじゃないの、教えて?」

「うわなんだいきなり気持ちわりぃ」

「は? 可愛いだろ」

「ええ……」


 いかんいかん、思わずキレてしまった。

 まあ、ここ一年くらい男口調だったから、ぎこちないのは事実だ。

 許してやろう。


「俺は……本が読みたかっただけだ。学校には行けないけど、文字は好きだから……」

「学校? この村に学校があるの?」


 はっきり言って、この世界の文明レベルは現代日本に遠く及ばない。

 こんな小さな村に学校なんてものがあるとは思っていなかった。

 ここも意外と大きな村なんだろうか。


「いや、流石にこの村に学校はないよ。治療院で臨時教室をやっているくらいかな」

「治療院は嫌いだ」


 なるほど。

 だから学校には行けないし、聖印とやらが怖くて治療院にもいけないってわけか。

 大体理解できた。


「だったら、普通に貸してもらえるよう、お願いすればいいんじゃ?」

「いえ、残念ですが、治療院の本は持ち出し禁止になっています」

「ああ、そうですか……」


 なるほど、八方塞がりだ。

 そして今思い出したが、治療院の聖職者っぽい人や、礼拝堂にいたおじいちゃんおばあちゃん方は大抵、首から4つの輪っかのペンダントを下げていた記憶がある。

 妖精神の聖印っていうのがそれのことなら、全員に隠してもらうっていうのも難しいか……なるほど。


「もういいだろ。本を勝手に持ち出したのは……悪かったよ」

「本来なら厳しく罰するところですが……まあ、子供ですし、今回は見逃しましょう」


 聖職者っぽい人もそう言っているし、赤髪の男の子も反省しているようだ。

 今回の件はこれでお開きになるだろう。

 普通ならな。


「君さ、本が好きなんだよね? 読むのが好きなの?」

「え? まあ、うん……文字ならなんでも……」

「そっか、じゃあさ……」


 いったん言葉を途切れさせて、ダイアーの方を向く。

 ダイアーはきょとんとしているが、すぐに気付いたようだ。

 まさか……といった様子で顔を引き攣らせている。

 そのまさかだ。


「俺の家に来ない? 何冊か、本があるからさ!」


 これも友達作りのため。

 自作小説を他人に見せることになるが、許せよ、ダイアー。

 

***


「ねえレーダ……流石にひどいんじゃないかな……」

「俺も友達が欲しかったんだ……それに、パパの小説が人の目に触れる、いい機会になったんじゃないの?」

「物は言いようだね……まあ、彼も楽しんでくれてるようだからいいけど」


 赤髪の男の子はというと、ダイアーから手渡された冒険小説に夢中なようだ。

 床に伏せ、まるで本に対して馬乗りになるかのような体勢で、ページをめくっている。

 ずっと黙ってはいるが、口元には微かな笑みが浮かんでいるから楽しんでくれているんだろう。


「好評そうで何よりだけど、君の方はいいのかい?」

「え、なにが?」

「レーダはあの子と友達になりたいんだろ?」


 気づかれてしまっていたか。

 まあいい、何も、俺だって考えなしに男の子の家に招いたわけでは……

 わけでは……


「あ、そっか。本で釣っても俺に興味持ってもらわないと意味ないじゃん」

「気付いてなかったんだね……」

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