room
ぬるいシーツが体に絡んで目が覚めた。
部屋に差し込む光はなくて、今が何時なのかわからない。
もぞもぞと起き上がると、まだその人も部屋にいたようで、おはよう、と声がした。
「あー……」
頭が重い。いろいろな不快感が押し寄せて、なんだか自分の体が鬱陶しかった。
「おいおい、恥ずかしげってもんが」
あられもない姿でまっすぐバスルームに向かおうとすると、その人が苦笑した。うるさいな。大体なんでまだいるんだ。
……面倒だ。いろいろ。返事をするのさえ。
熱いシャワーが心地よくて、何も考えずにしばらく頭からお湯をかぶり続けた。そういえば結局今は何時なんだっけ。
「おかえり。目は覚めた?」
シャワーから戻っても、まだその人はそこにいた。
まるで存在を無視するかのように素通りして、クローゼットに向かう。
「うーん、やっぱり君はかわいいね」
嬉しそうに笑っている。意味がわからない。
「……帰んないの?もうこんな時間」
やっと目を向けた時計は次の日の夕方を示していて、この人はずっと何をしていたんだろうか、と思った。何も無い他人の部屋で……暇だろうに。
「うん、もう少ししたら帰るよ。君のごはんを作ったらね」
「起き抜けだよ……いらないよ」
「それは残念。なら食べたくなるまで帰れないな」
本当に意味がわからない。帰れ。
回らない頭のまま着替えを済ませると、おでこにキスが降ってきた。
「……」
「今日はごきげんナナメだね」
「うるさい」
「つれないなぁ」
この人のメンタルはどうなっているのか、と思う。言葉が通じていないのだろうか。
「食べたくなるかわかんないよ。帰りなよ」
「いいの?君の好きなオムレツを作るのに」
「……明日なら」
「じゃあ明日まで僕はここにいられるってことだ」
もう一度キスを落として、嬉しそうに笑った。
嫌いだ。鬱陶しい。面倒だ。大嫌いだ。
「もう一回、寝る。眠い」
それだけ言って、その人の背中に腕を回した。