裏路地の危険
俺は赤ちゃんになっていた
これは転生と言うやつだろう
最初はとても呑気であった。
(前世の記憶もちじゃんw
人生楽勝じゃね?ウェーイwwww)みたいな
草に草を生やす位には舐めきっていた。
どうやらここは海外で俺は
そこに住む純日本人の少女らしい
何だハーフじゃないのかと、落胆した。
が、物心つく年齢の時には
ストリートチルドレンとして生きていた。
(まさか、出生届けも出してなかったとは
ふざけんなよクソ親め…………)
年としてはすぐに死んでも
可笑しくないような年齢だった。
だが、前世の記憶があるおかげで
基本的には暮らすのには困らなかった。
(これでも死ぬ直後までは
日本で自衛隊員してたんだ。
簡単に死んでたまるか!クソッ!)
特に生きる理由も無かったが
半分意地で生きていた。
(しっかし、治安悪りぃなこの街
裏路地には注射器、薬の袋があるし
追い剥ぎ何て日常茶飯事だし………)
ここでは俺はとても生きにくい
この年の割に顔が良いからである。
もし、悪党に見つかりでもしたら
少なくとも今世はもう詰みだろう。
自衛隊の知識がなければとっくに
死んでいただろう。
(今日はどこで寝ようか
そう言えば、あそこのでっかいゴミ箱
何時も空なんだよな、そうするか…………)
でも、この暮らしも楽しかったりもする。
常に命の危機に晒されているが
1度死んだ事がある身としては
どこか余裕があるような気がする。
(前世では余裕が無かったからな~
そう意味では今世は良いかもしれない……
いや、やっぱ駄目だわ。)
暗くなってきた路地裏を走って
でっかいゴミ箱を目指す。
あのゴミ箱は何故か路地の奥の奥にあり
当然、ゴミを捨てる人も居ないので
中身はカラッポである。
素材は鉄で出来て居て
昼は熱を溜め込んでいるおかげで
中は暖かく、暖をとるには最適である。
ゴミ箱の前に到着し
錆びた取っ手をつかみあける。
中は埃が溜まっていてくしゃみが出る
中に入ってみると生暖かく、暗く、狭く
俺にとってはとても安心する場所である。
(あ~…………よく、眠れそう…………)
……………………
暫くして、俺は半分寝た状態だったが
ゴミ箱の外で鈍い音がする。
ビックリして飛び起きそうになるが
それを止め、耳を澄ませる。
男と女が言い合ってるようだ。
最初は痴話喧嘩かと思ったが
どうやらそうではないらしい。
どうやら女は薬を買いたいが金が足りず
密売人らしき男は
暴言をはいているようだった。
そうっと、外を覗くと
明かに怪しい格好の男と
痩せこけた女が居た。
(うわ、関わらんとこ………)
そう思っていたが男が女に銃を向けた瞬間
咄嗟に飛び出し足に向かって体当たりする
バランスを崩した男が拳銃を手放す。
地面に転がった拳銃を奪い構える
やばいヤったわ、終わった。
うわーやっぱりこの体だと拳銃重いな
てか拳銃ってこんなに重かったっけ?
夜だし、暗いし当たるかな?
何で飛び出して行っちゃったんだ?
馬鹿だな、俺はただの子供なのに
先輩ってどうやって構えてたっけ?
弾ってどんな軌道だったけ?
弾は何発入ってるんだ?
だいたい、何でこの女性を助けたんだ?
(いや、現実逃避するな!目の前を見ろ!)
小さな手でしっかりと拳銃を握り
目の前の男に向かって話しかける。
「おい、あんたは密売人か?
女性ひとりに拳銃を持ち出すなんて
随分と臆病者なんだな、オイ?」
俺が嘲笑すると男は顔を赤くして
強い訛りの入った英語で喚き散らす。
「すまん、聞き取れんわ黙ってくれる?」
男の近くの地面に威嚇射撃をする。
反動は想像より強く、弾は予想よりズレ
男の近くに着弾する。
男はビビリ散らかしている。
(うぇ、腕と手がクソ痛ぇ………
こりゃ何発も簡単に撃てないな………)
「ほら、そこの人、逃げないと
この男に殺されるぞ~?
殺されたくなきゃ薬やめろよ?」
女性はカクカクと頷くと
壁にもたれ掛かりながら去って行く
(さて、これからどうするか…………
逃げるにしても明らかに俺の方が不利だし
殺すにしても簡単にゃ出来んよな………)
主人公は俺とか言ってるけど
前世でも今世でも普通に女子です。