VoLTEがよくわからないスマホユーザーのメモ
【大前提】
本作では Android スマホについて説明します。iPhone には触れません。iPhone の場合、6s 以降なら Apple 様がなんとかしてくれますから。
【VoLTE でつながるには】
スマホに SIM カードを挿入すると、その SIM カードを発行したキャリア (電話会社) に応じたモデム設定ファイル (Qualcomm 社製のチップを搭載している場合は mcfg_sw.mbn。Qualcomm 社以外については調べた範囲では不明) が読み込まれます。この設定ファイル内に VoLTE の設定があれば VoLTE でつながります。VoLTE の設定が含まれない設定ファイルもあり、1 つのキャリアに VoLTE 用と非 VoLTE 用の 2 つの設定ファイルが用意されていることもあります。
VoLTE の設定がない場合、通常、そのスマホの通話は 3G、データ通信は 4G でつながります。しかし、スマホと基地局が接続する際のやり取りで「VoLTE の設定がないから、今後の通信では 4G を使用せず 3G のみで行います」と決まってしまうことがあります。楽天モバイルのような 3G を提供しないキャリアでこれが発生すると、データ通信だけ使用すればいいやと考えているユーザーは何もできなくなってしまいます。
最も厄介なのは、設定ファイルはキャリアごとに用意する必要があることです。しかも、VoLTE の設定については、スマホメーカーからキャリアに認証を依頼しなければなりません。世界中にキャリアが何社あるのか知りませんが、スマホメーカーがその全部に認証を依頼するのは現実的ではありません。販売地域にあるキャリアのみ認証をとるのが普通ですが、認証なしで販売するメーカーもあります (お役所仕事で時間がかかり、認証を待っていたらいつまでたっても販売できないというケースもあるらしい)。なお、設定ファイルが見つからない場合は、「その他」用の設定ファイルが使用されますが、ほぼほぼ VoLTE は対応しません。
ここで結論が出てしまいました。VoLTE を使用できるかどうかを決めるのは、使用するスマホに使用するキャリアの設定ファイルが含まれているかどうかです。キャリアの代理店で販売されているスマホなら大丈夫ですが、SIM フリーや海外からの輸入モデルの場合、設定ファイルの有無を確認するのは難しいです。人柱の報告をネットで探すのが現実的でしょう。
【キャリア側の事情】
世界には多くのキャリアがあり、VoLTE についても日本とは扱いが変わります。ここでは英語で情報を得ることができたマレーシアとシンガポールを例に挙げます。
【きまぐれ型】
VoLTE サービスを提供するには回線に余裕が必要です。そうでなければ通話が遅延する恐れがあります。これを避けるために、余裕のないときは他の条件をすべて満たしていても予告なく VoLTE の使用を拒否するキャリアがあります。災害時の通話のようなものだと考えればいいでしょう。調べた範囲ではマレーシアの U Mobile というキャリアがこれをやっています。
【厳格型ホワイトリスト】
対応機種以外では VoLTE を使用できないタイプです。マレーシアでは「高いプランに加入したユーザーの対応機種のみ」VoLTE が使用できるキャリアが多数派です。VoLTE は高いプランに加入したお金持ちユーザー向けサービスという位置付けなんですね。格安プランを VoLTE 専用にしてしまう日本のキャリアとは真逆の方向です。ちなみにスマホには IMEI という固有番号が付与されていて、キャリアは接続中のスマホの機種を特定できます。
ところで、シンガポールの TPG (4G のみ対応のキャリア) のユーザーがマレーシアの yes (こちらも 4G のみ対応のキャリア。TPG とはローミング契約が結ばれています) を利用できなかったというケースを見つけました。このユーザーが使用したのは Xiaomi のスマホでしたが、TPGの対応機種であっても、yes の対応機種ではありませんでした。今後、VoLTE が普及すると、世界中で同じようなトラブルが増えると思います。
【ゆるゆる型ホワイトリスト】
日本のキャリアがこれに該当すると思います。対応機種以外でも、つながったら使えるよ、サポートはしないけどね。というタイプです。
【設定ファイルがないスマホでそれでも VoLTE を使いたい場合】
VoLTE の設定ファイルがないスマホで VoLTE を使いたい場合、大きく分けて 3 つの方法が知られています。
①Xiaomi の裏コマンドを使う
Xiaomi 社製のスマホは、設定ファイルを無視して VoLTE でつなげる裏コマンドがあり、簡単に設定できます。詳しくはググってください。この機能があるので Xiaomi を愛好するユーザーも一定数います。ただし、この機能も万能ではありません。前述の TPG と yes のケースでは、TPG のサポートは Xiaomi ユーザーにこのコマンドを使用するよう伝えていました。それでも yes ではつながらなかったわけです。それから、Xiaomi が日本で発売したモデルでこのコマンドが使えるかどうか私は知りません。
②Mediatek 搭載スマホの検証モードを使う
Mediatek 社のチップを搭載し、さらにエンジニアモードを利用できる機種の一部に、一時的に設定ファイルを無視して VoLTE でつなげることができます。以前はエンジニアモードに入ることができれば、ほぼ使えたようですが、最近は使えない機種が報告されています。新機種では期待できないのかもしれません。使える場合でも、これは検証用の機能であるため、電源を入れなおしたり、機内モードにしたりすると解除されます。
③他のキャリアか他のスマホの設定ファイルを流用する
詳しくは PDC とか Efstools とかでググってください。たとえば、Google Pixel は中国で販売されていないため、中国のキャリア用の設定ファイルがありません。そのため、中国の Pixel ユーザーには他のスマホから mcfg_sw.mbn ファイルをコピーして VoLTE を使用している人がいます。
【ローミングはどうなるの?】
これについて説明した資料は見つけられませんでした。その国のキャリアの VoLTE 設定ファイルがないスマホを国外から持ち込んだらトラブルになると思いますが、誰がこんな仕組みを考えたんでしょうね。