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出会い.6

眠たい授業が終わり、昼休みの鐘が鳴る。

さてと、昼飯を買いに食堂へ行こうとしたら、入り口辺りがざわついている。なんだ?

寝ぼけ眼でそちらを見ると眠気が吹き飛んだ。




春野だった。見えないのになにかを見るように教室を見ている。

気配察知で僕を探しているのだろう。

いや、そうだよね?他に知り合いがいるかもだけど。


そして、僕の気配を察知するとにこっと笑いかけたので、他の生徒が勘違いしている。




「今、俺に話しかけたよな?」

「あんたな訳ないでしょ~、あんな可愛い子がさ」

「もしかして俺か?台所の滑り取りがとくいだかんなー」

「んだよ、それ。でも、そこの化け物でないことは確かだよな~」

「止めなよ~、あんたも呪われちゃうよ?」

その言葉を聞きながら、春野のとこに急ぐ。

つーか呪われたらと内心思うけど相手にしない。こっちは遥かに強いから。


いや。それよりもぼっちになんの用か知らないけど、目立ちたくない。





「あ、里中先輩。こんにちわ。昨日はありがとうございます」

そう言うと、ぺこりと頭を下げる。


「ん。ああ、それはご丁寧にどうもありがとう」

「えへへ。先輩がどこにいるのか分からないから、二年の教室を一つ一つ探しちゃいましたよ~」

なんでもないことのようにそう言うと微笑む笑顔は、クラスでも人気あるんだろうなと思う。

しかし、お礼を言うためにわざわざここまで来てくれたのか。



「連絡してくれればそれでいいのに」

「えと。先輩のアドレス知りませんよ?」

「あ、そうか。ごめんな」

僕はリア充じゃないので、アドレスを交換しなくなって久しい。

普通の人は、仲良くなったら交換してるんだよな。



「それと、お礼がしたくて」

「お礼?」

「お礼なら、俺たちにしてくれよ」

「!瀬田」

話しに割り込んできたのは、瀬田幸次郎。背が高くダンジョン部のエースだ。

このクラスのカーストトップのお山の大将だ。



「里中、お前ぼっちのくせになんで、そんな可愛い子と仲良く話してんだよ」

「ちょっと、止めなよ瀬田」

「うるせえぞ、俺に指図するなよ」

止めようとした女子生徒を睨み付ける。

見ての通り偉そうで傲慢なとこがあるが、ダンジョンに潜って結構魔物を屠っているので羨望の目で見られてもいる。



「そこの女子。こいつみたいなキモい奴と話してないで、俺と昼飯を食おうぜ?」

「あ~、ごめんなさい。キモいあなたとご飯なんて嫌です」

シンと静まり返る。空気が2、3℃下がったか感じか。


瀬田に面と向かって言う奴も中々いないからね。

一瞬の間の後。クラスから、廊下から爆笑が広がる。


「ははははは!瀬田!お前の方がキモいってよ!」

「お前、性格悪いのアピールしてどーすんの!?」

他のリア充の奴等にからかわれてる。

瀬田は、プルプルと震えている。恥ずかしいだろうな。


「っせーな!おい、なんで俺がこいつよりキモいんだよ!」

「だって、身に纏ってる気配だって優しさがありませんもん。傲慢さが滲み出てますそれにリア充ってみんなより上だと思ってるんでしょう?

それなら、下の人間の見本となるべきです。にわかトップさん」

まあ、リア充としては、納得が行かないんだろう。

でも、春野もそんなこと言ったら火に油を注ぐだけ。

春野に掴みかかろうとしたので、僕が前に出て庇う。


「こんな!呪われてぼっちで部活やってる奴のどこがいいんだ!」

「止めとけ、瀬田。暴力振るったら停学じゃすまないぞ」

リア充グループの一人がそう言うと、こちらに頭を下げる。

「二人ともすまないな」

そう言えば、話しの通じるリア充もいたな。鹿島だったか。

「……じゃあ私が探検部に入ります」

そんな時、あろうことか春野は挙手して宣言する。




「なに?」

「私が、探検部に入ればぼっちじゃないですよね?」

「春野?なに言ってるんだ?危ないだろ」

「大丈夫ですよ、先輩。先輩がいるんですから」

「いやいや、でもね」

「でもも、へちまもないって言いますよね」

「言わないよ?言わないからな」

聞いてない。春野は瀬田に向き直ると宣言した。ビシッと指さして。




「勝負しましょう」

「勝負だ?」

「はい。傲慢さんと私たちで、学校迷宮に潜って、先に地下20階までたどり着いた方の勝ちです」

「俺は、傲慢じゃねー!」

「あ、すみません。失礼な人のことは覚えませんので。文字通り」

「文字通り~?」

見ててハラハラしてしまう。気が強いな。

周りの生徒が、ざわつくのが分かる。

「ほら、あの子……」

「そっか。見えないのか」

こう言うひそひそ話ししているのがムカつくんだよな。

お前らがおんなじ状況だったらどうすんだ。



「でも、すごいな。それで、あの瀬田に真っ向から立ち向かえるなんて」

「でも、なんであの化け物……」

「ちょっと失礼だよ。あの子見えないから分かってないんだよ」

うるさいな。ギャラリーの心のない言葉。苦笑してしまう。

これだから人に希望なんて持てないんだよな。


うつむくと、春野は僕の制服の袖を握ってくれた。

僕が、顔を上げるとこちらを見てにこりと笑うのだった。

なんて、眩しい笑顔なのだろう。それだけで救われそう。




「いいだろう。俺とお前たちの勝負だ。お前もいいな、里中」

「あ、ああ」

嫌とは言えない。春野が僕のために頑張ってくれたんだから。

周りが、ドッと沸くのを無視して僕と春野は勝負することになった。



つづく

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