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薄紅湿原.11

「こっけぇぇぇぇぇ!」

なんで鶏みたいな鳴き声なの?

トリスタンは部下をやられて怒り心頭だ。

こちらに向き直ると部下に命令を下す。

飛び掛かってくるトリスタン部下の刃を全て避ける。


「お兄ちゃ~ん!離れて!」

柚子のスキル『力変換』で大岩を拾ってぶん投げる。

当たらないまでもびっくりして動けないとこを咲の風の連刃で切り裂く。

そして残りを二刀流で細切れにする。

技のスキル『微塵切り』だ。


「こけ~!こけ~!!こけぇぇぇぇ!」

怒ったトリスタンの斬擊でいなしながら後退る。

レアモンスターだけあって強いな。


そして、トリスタンのスキルが発動した。

回転斬りからの上段斬りの『クロスザンバー』だ。


「おお!お義兄さん!」

「お兄ちゃん、大丈夫!?」

黒野を下がらせ柚子が前衛に来ると回復之祝詞を使う。


しかし、回復するよりも僕を踏みつけ蹴りの連打!

ものすごい踏みつけに地面にめり込む。

レベル20前後だったら負けていただろう。

だけど僕は違う。踏みつける足を掴み「こけっ!?」そのまま起き上がるとぶん投げる。


「まあ、中々頑張ったね」

「うそ~!?お兄ちゃん平気なの?」

「あ~うん。心配かけてごめんね」

「里中くん、上!」

來末ちゃんの声に見上げれば羽根をバタバタさせて降りて来るトリスタン。

なんだ、飛べないのか。まあ、逃がさなくていいけど。

落ちてきたとこを下段斬り。


「こけぇぇぇぇぇぇぇ!?」

断末魔を上げて消え去ると素材とドロップアイテムがいくつかある。

ともかくそれよりもあのおじさんは、大丈夫だろうか。


おばさんがおじさんに抱きついて泣いているので声がかけづらいな。


「無事で良かったですね、勇気先輩」

咲が近寄って来て僕の手を握る。

必要なこととは言えドキリとするのは否めない。

咲の魔力も回復しているだろう。


「でも、お兄ちゃんがぼこぼこにされた時はびっくりしたよ~」

「ああ、うん。結構素早かったな」

「それですます~?」

「お義兄さん。素晴らしいアイテムですよ」

みんなと話してると黒野と來末ちゃんがアイテムを運んできた。


「わぁ~、凄いね!」

柚子が瞳をキラキラさせている。

トリスタンの鎧や兜。ガントレットや嘴や爪。羽毛なんてのもある。

魔石も大小あり換金したら結構な金貨とかになるのかもな。


「後で山分けだな」

「私としてはレアモンを見れただけでラッキーだよ。里中たちを誘って良かった。ありがとう!」

相川は、僕の手を繋ぎブンブンと振ってくるので、よっぽど嬉しいのだろう。


「いや、まあいいんだけどね」

満面の笑みで僕を見てくるので、なんだか照れてしまう。

今までは、嫌悪や蔑み。見下すか同情するかの視線や表情が多かったから。


「勇気先輩、良かったですね~」

咲もなんだかにこにこしてる。その内にもおじさんとおばさんがやってくる。


「ほら、あなた!」

バシッと尻を叩かれてるのはバツの悪そうな表情をひているおじさん。


「あ~その……助かった。ありがとう。

妻を守ってくれたことも感謝する」

今度は文句ではなくすゆなりと頭を下げて来たのできょとんとしてしまう。


「な~んだ。年上なのに礼儀知らずかと思ったんですけど、ちゃんとお礼が言えるんですね~」

柚子の皮肉に縮こまるおじさん。まあ、そう言われても仕方はないけど。


「柚子、失礼だよ」

「ふ~んだ。家族を馬鹿にされて黙ってられませんて!」

「そうですよ、お義兄さん。柚子ちゃんの意見は正しいのです」

「はいはい。静かにしてね~」

憤慨する黒野を來末ちゃんが宥める。

僕は苦笑いしながら話しかける。


「おじさんは怪我はないですか?」

「う、うむ。あんな化け物が出て死ぬかと思ったが、君のお陰で助かった」

「ホントですよ。奥さんに心配かけないで下さい」

「ああ、そうだな」

「この人ったら私との結婚指輪を落としたから探しに来たのよ」

萎縮するおじさんを横目に照れくさそうに話すおばさん。


「おい、お前!」

「いいじゃない。この人たちには知る権利があるわ」

どうやら探索中に結婚指輪を落としてしまったのでこっそりと探しに来たのだそうだ。


「はあ~、どうして話して上げなかったんですか?」

咲の言葉にバツの悪そうにそっぽを向く。


「いや。妻に迷惑かけたくなかったからな。夜のダンジョンは危険だ」

「なに言ってるんですか。私たちは夫婦なんですよ。

長い間連れ添って来たのに……」

おばさんは悔しそうにうつむく。

暫く沈黙が続くと肌寒くなって来た。

湿原の夜はまだ半袖では寒いのか。


「まあまあ、ここにいても魔物を誘き寄せるだけですよ~!帰りましょ?」

來末ちゃんがにこやかに言うとそれぞれが歩き出す。

念のため黒野を前衛に殿はおじさんがつとめる。


「里中くん……だったな」

「はい」

歩きながら話しかけてくる。

「今更だが、昼間は怒鳴ってしまってすまなかった……それに化け物なんて言ってしまって」

「あ、もういいですから頭を上げて下さい」

また、立ち止まり頭を下げるので慌ててしまう。

まだ、魔物が活動してるエリアだからそう言うのは後でいいんだよね。



つづく

まだまだ名の知れるには遠いです~

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 これからも楽しみにしてます。
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