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出会い.4

「……でも、見えないなんて全然気づかなかったな」

「そうなんですよ~。私のスキルのお陰です」

春野は得意気に胸を張る。バランスの良い胸が弾む。

おほん。


「そんなスキルあるんだ?」

「ええ。気配察知と移動補助です」

確か、スキル辞典に載ってたな。スキルは、毎年発見されるので辞典も毎年更新される。



気配察知は、相手の気配を感じるから居場所が分かるとかだったかな。

移動補助は……なんだろ?

分からないので聞くことにした。


「移動補助は、歩くのをサポートしてくれるんです」

それは、転ばないようにとか、足元に危険な物が落ちていたら避けてくれるスキルだそうだ。


だから、ロッドがあるとは言え堂々と歩けていたのか。でも、たまに転んでたよね。ドジなのか。


「えと、それで、さっきの後輩は?」

「ああ~。気になります?それとも私のことが、気になります?」

ちょっといたずらっぽくこちらを見てくる。

なんで、二度聞いてくる?


「まあ、普通に」

好奇心は人並みにあるけど。素直に返答があるとは思わなかったのか、慌ててる。


「おっとっと!ストレートですね、先輩!」

「あ、いや。君のことがじゃなくて!また、さっきの奴に狙われたらと思ってね!」

僕も慌てる。今の会話を思い返したら僕が、春野のことを気にさているみたいじゃないか。


「なんですかー。黒野のことが気になるなんて!先輩もしや、そっちか~!」

「は?」

そっちってどっち。

「春野がなにを言いたいか分からないけど、君の考えてることは違うと思うぞ?」

「分かってますって。冗談ですよ。それで、黒野のことですか……」

言いかけて、黒野のお腹の音が鳴る。





「あ、ははは。すみません。お腹空きました~」

「……取りあえず、出ようか」

「はい」

魔物に警戒しつつ、エレベーターで一階へ。やたらと振動か多いな。

ずっと無言でも僕は気にしないけど、取りあえず話しを振ってみる。




「春野は結構探索してるのか?」

「ん~。さっきも言いましたけど、最初の頃は友達と潜っていたんですけど。

友達が止めてからはお一人様ですね」

「でも、ソロでするには危険だよね?春野はその…」

「はい。見えませんからね。でと、必要なんです、お金が」

そうか。呪いを解くためか。教会なら解呪してくれるだろうけど、呪いによっては高い。


確かに、ダンジョンならレアアイテムや素材で稼げるだろうけど。

もしかして、同じ理由なのかな。話しを続けようとして一階にたどり着いた。






外はもう薄暗く。部活も片付けが始まっていた。

少し離れたとこに見知った顔が見えた。ダンジョン部のメンバーだ。

だけど僕は、声をかけることはなく春野を促す。




「?先輩?大丈夫ですか?」

「……ん。ああ。行こうか」

僕たちは、駅に向かって歩きだした。

下校する生徒たちの相変わらずのヒソヒソこちらを見て話すけど、スルーする。

たまに思うけど、こいつらは自分が同じように話されたらなんとも思わないんだろうか。

投げた石を、投げ返されることを分からないんて可哀想だなと思う。


春野はそんなこと気にせずに僕の隣を歩いてる。




春野は、人通りが多くてもスイスイと避けて歩けるみたいだ。

最初は見てて、大丈夫かなとか思っていたけど心配ないかな。


街路樹の遅咲きの桜も、散り始めているな。

「桜も散り始めたな」

「桜ですか~。ちっさい頃の記憶しかないですからまた、見てみたいなー」

そうだった。つい普通の感じで話しかけてしまった。後悔する。


「そうだね。いつかみんなで花見なんてのもいいかもね」

「うんうん。日曜日に行きます?」

「え?そうだね。妹も連れてきていいかな?あいつ、人と話すの好きだから」

「はい、もちろん。人数が多い方が楽しいですもんね」

どこか声のトーンが落ちたような。気のせいか。

もしかして春野は、ああ見えて人見知りなのかも。気をつけないといけないな。





駅前には、複合施設ありそのビルと直結しているので便利だ。

「んで?春野はなに食べたいの?」

「ん~。節約を考えて、そこのファミレスにしましょう」

全国展開してるファミレスは、ワンコインで安くてコスパにもなり、旨いので僕の懐にも助かっている。





もう、夕食の時間帯でもあり混んでるな。休日じゃなくて良かったよ。

ふ。みんなが僕を見て顔をしかめるが隣にいる春野を見てドキッとしてるのが面白いな。



「いらっしゃいませ~、二名様ですか~?」

ウェイトレスはプロなのか笑顔を崩さない。

お金を貰ってる以上はこうでなきゃな。



ウェイトレスに席に案内される途中、小さな子供が駆け抜けて来て春野にぶつかりそうになったので、腕を掴んで引く。


「危ないな」

「あ、ありがとうございます」

「いや」

思った以上に距離が近づいて、ちょっと気恥ずかしい。早く解呪出来るといいな。



メニューを見て気づく。春野のためにメニュー一品一品説明する。

「ご迷惑かけてすみません」

「いや、気にしなくていいよ」

「えへへ。やさし」

春野は照れながらも春の野菜パスタとドリンクバーを。

僕はチーズハンバーグセットを。


まあ、いつものように僕を見ると笑顔を崩しそうになるウェイトレスたちを眺めながら苦笑する。


これはまだ、マシな方だ。もっと酷い奴はスマホで撮影しようとしたりするから。

あまりにしつこいと相手のスマホを握り潰して押しつけるけど。


これでも探検部だから、他の同世代より体力もあるからね。レベル高いし。


「……先輩?」

「大丈夫だよ」

無理して笑う。心配かけないために。




つづく

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