薄紅湿原.3
薄紅湿地帯は、そのエリア特有の魔物がいた。
沼から上がってくる薄紅ヤモリや、白紫バードなど。
レベル的には同レベルなので慎重に進むことにした。
「はぁ。ダンジョン探索が悪いとは言わないけど、普通のデートがしたいな~」
黒野はぶつくさ文句を言う。
まあ、そうかもしれない。僕なんかは恋を諦めているけど、黒野とかは普通に恋愛出来る訳だからな。
ダンジョン探索とかではなくWデートとかにして上げた方がよかったかな。
悪いと思いつつ黒野には前衛を任せる。
「いいじゃんか。私たち美女と探索出来るなんて中々ないよ?」
柚子がにひひと笑う。自分で言うな。
「はぁ。そうですかね?さっきから僕ばかり盾になってませんか?」
「そりゃあ、黒野は私たちを守る騎士なんでしょう?」
「そーですとも!僕は柚子ちゃんたちを守る盾!?」
言葉を止めたのは、いつの間にか、リザードマンたちが剣や槍を構えて待ち構えていたからだ。沼から上がりじわじわと囲む。
「黒野!」
「受け取った!咲ちゃんの愛の証!」
「ば~か」
咲ちゃんが渡したのはディフェンスポーション。
それを飲むと一定時間防御力が上がるのだ。
それを黒野が飲んで一時的に防御力を上げる。
リザードマンは奇声を上げると襲いかかってくる。
矢を放ち槍を構え、剣や斧で攻撃してくる。
「黒野ガード!」
黒野が咲ちゃんに攻撃しようとしたのを大盾で防ぐ。
ガツンと火花が散る。
「相川、行くぞ」
「えへへ。リザードマンか~!タイプ別にコンプ出来た~」
うひひと笑い。魔物を見て喜ぶ相川。
リザードマンがこうげきしてくるのにギリギリまでにやにやして眺めている。
「相川!」
「おっと」
リザードマンの袈裟斬りをかわして身体を回転させてヌンチャクでリザードマンの横顔を打つ!続いて胴を打つ!
コンボを繋げて一体倒す。
ダンジョン部の時は目立たなかったけど凄いな。
「風の刃!」
咲ちゃんが腕を振るたびに風が巻き起こりリザードマンたちを蹴散らす。
「ほぇ!」
黒野のシールドアタックでリザードマンたちをノックバック!
「雷之祝詞!」
また、ごにょごにょ唱えて柚子の雷でリザードマンを蹴散らす。
僕も迫るリザードマンたちを蹴散らしていく。
まあ、ホントは僕一人でどうにかなるんだけど、みんなに倒してもらえれば、みんなのレベルも上がりやすい。
「……ふぅ。終わったかな?」
「そうだね。素材も沢山でらうはうはだね!」
「柚子ちゃんたら」
咲ちゃんはくすくす笑い。僕たちはまた、警戒しつつも和やかに進んでいく。
湿原狼が出ると、「犬はちょっと!」と黒野の後ろに隠れる。
そう言えば犬好きだから似ている狼は倒しづらいか。
黒野が盾になり噛まれるが、M男のスキルがあるので防御力が上がっている。
「さて。お義兄さん?噛まれっぱなしは嫌ですけど?」
僕はどうしようかと迷っていると別の道から来た冒険者たちが湿原狼に斬りかかる!
「?どうしたんですか、先輩!」
咲ちゃんも気配察知で人数が増えたことに気づいた。
ガラの悪そうな冒険者たちが湿原狼を仕留めていく。
「きゃうん!きゃうん!」
逃げていく湿原狼たちを一方的に倒すなんて。
それなりの冒険者たちだ。て、あれ?見覚えのある冒険者がいるな。
「お、この前の学校でなめた真似してくれたハーレムパーティーですよ、徳井さん」
「ちっ!なんでこんなとこいんだよ!まあいい。行くぞ。鳥羽。
魔物退治して素材GETだぜ」
徳井と、鳥羽はこちらを一別すると行ってしまう。
相変わらずのガラの悪さだ。
ああいう奴って自分でガラの悪いことに気づいてないとこが羨ましい。
「お兄ちゃん、ワンワン助けよ?」
「しかしあれは、魔物だよ?」
「黒野サイテー」
「まあ、後を追ってから考えよう」
僕たちは、徳井たちの後を追った。
その途中にも薄紅ヤモリと白紫バードに襲われたけど、今度は僕が瞬殺する。
「やはり、お兄さんの呪いの力は強いですね~」
「黒野、勇気先輩に失礼なこと言うな!」
咲ちゃんがロッドで黒野の頬をぐりぐりしてる。
黒野は至福の時を迎えて防御力アップ!
まあ、呪われたから強い訳でもなくて。
黄昏ダンジョンに入ったからだ。
「……咲ちゃんてSなの?」
「あわわ!ち、違いますよ?黒野だとつい…先輩にはしませんよ?」
「お義兄さんと言えど、咲ちゃんの愛情は渡しませんよ」
「変なこと言わないでね~?」
なんだかんだ賑やかなのは言いことだけど。
幼なじみって強いよな~。ちょっと心は切なくて。首を振って気持ちを切り替えた。
恋は、僕には贅沢なんだから。呪われてる僕には。
でもそのお陰でみんなを守れるならそれでいい。
つづく




