かこ.3
途中、冒険者や探索者と遭遇することがあった。
友好的な人たちは、情報交換して来るけど、質の悪い人は手に入れたアイテムを奪って来ようとする。
もちろん違反にはなるから警察に捕まるのだけど。
「ここら辺は魔物が強いな。みんな大丈夫か?」
「はい。壬生先輩、マナポーションです」
「うん。ありがとう」
壬生先輩は、マナポーションを受け取りながら部員の様子を窺う。
みんな疲れているので、ここまでかなと思う。
「……ここらで引き返すか」
「冗談でしょう!?まだ、大したアイテム手に入ってませんよ!?」
「瀬田、お前の敬語キモい」
「うるせーな、七瀬。そんなこと言ってる場合かよ」
「でも、引き返すべきじゃないかな?」
「そうだな。体力も魔力もこの階から減りが激しくなっている」
他の部員たちも口々に言う。
「僕もそう思います。回復薬ももう残り少ないです」
「荷物持ちは黙ってな。ともかく俺は行くぜ」
ズカズカと歩き出す瀬田。それを止めようとすると、地面が光ると魔方陣が光る。
「なんだと!?」
魔方陣からハーピィがたくさん出てくる。トラップか!
「他にもいるわ!堪らないわ~!」
「もう。そんなこと言ってる場合じゃないから!」
相川愛美がとても興奮してる。嗜める七瀬葵。
その間にも、テラーナイトが襲い来る。
それを瀬田が、他の近接系の部員が防ぐ。
「みんな、離れるなよ!陣形を崩すなよ!」
壬生先輩が眼鏡のズレを直しながらみんなに注意を呼び掛ける。
眼鏡のズレを直してる内はまだ余裕がある。
僕もみんなのためにいつでも回復アイテムを渡せるようにしておく。
しかし、だ。すぐに異変に気づく。
このトラップは魔物を呼び出すだけではなかった。
このフロア全体に魔物を呼び寄せるのと、魔法を封じるのだ。
ヒーラーと魔法使いは全く役に立たない。
七瀬葵も花火を使う技なので魔力を消費するが、使えなくて攻撃アイテムの火炎石を使っている。魔物に当てると燃やしてくれる。
しかし、ここで活躍したのは相川愛美だった。
珍しい魔物に喜び、ヌンチャクで相手を粉砕する。
「ほらほら!どんどん行くよ!みんな、私が守って上げるから!」
いつもよりテンション高いのは、スキル『ピンチにステータス倍加』が発動してるからだろうか。
瀬田よりも動きが速く仕留めていく。
「てめー!力を隠してたな、相川!」
「しらないよ、そんなの!」
壬生先輩も式神を使用出来ない分、部員に指示を出しながら刀を振るっている。
滅多に刀を振るわない壬生先輩が刀を振るってる。
かなりヤバイと言うことだね。余裕かと思いきやそうじゃなかった。
ハーピィを弓矢で落として、テラーナイトの恐怖のスキルに負けないでぼくたちは、まるで無双ゲームをリアルでしているようだ。
しばらくすると魔物もいなくなり静かになった。
地面には沢山のドロップアイテムと素材があった。
「はぁ……はぁ……終わったか」
そう言いつつ瀬田は、ドロップアイテムの剣を拾う。
鑑定スキルの部員が鑑定するとテラーソードとある。
テラーナイトが落としたのかな。
なんか、黒くて禍々しい剣だ。嫌な雰囲気になる。
「すげー!こいつは力が溢れて来る!」
テラーソードを拾って構えて二、三度振り具合を確かめる。
「はは!こいつはいい!壬生先輩、俺が使ってもいいよな?」
「あ、ああ。しかし、呪われてないのか?」
「大丈夫、大丈夫!こいつで相川。お前にも負けないぜ」
「いや、興味ないしそう言うの」
相川もすっかり落ち着いている。
魔物がいなくなったからかな。
しかし、魔物博士の職業なのに相川愛美があんなに強かったなんて嬉しい誤算だった。
しかしまだ、乗り切れた訳ではなかった。
絶望はすぐそこまで迫っていたのだった。
つづく




