過去.2
周りには、桜の花が植えられていてもう少ししたら、花見客で賑わうのだろうけど今は、冒険者たちがいる。
流石は、SNSでの拡散が早いからか、何組かの冒険者たちがいた。
未踏破ダンジョンは、危険な分、宝もあるから金欲しさの冒険者が集まる。
「さあ。壬生さん俺たちも行こうぜ!」
「ヤバい!新しい魔物に出会えるかと思うと興奮してきた~!」
瀬田に続いて、愛川愛美も続く。魔物好きで、魔物図鑑をコンプリートするのが夢だそうだ。小柄にぴょこぴょこ動く印象だ。
「仕方ない。行くとするか。
里中、回復アイテムが切れて来たら言うんだぞ」
「はい。回復役はしっかりやります」
「里中のことは私が守って上げるよ」
なんでもないことのように七瀬は言う。
「もしかして、照れてる?」
「照れてないよ」
嫌々と思いつつも僕たちは、新たなダンジョンの発見でわくわくしてる部分とあるのだろう。
レアなお宝だと、強欲校長や傲慢教頭に持ってかれる可能性もあるけど、部活動時間外なら、レアアイテムが手に入っても僕たちの物に出来るから。
ダンジョンの種類は、いくつかある。
洞窟内や建物内。そして、塔。
それに、自然を模したダンジョン。森や山など。
ここは、自然を模した公園内を迷路にしたかのようなダンジョンだった。
踊って、こちらの魔力を下げるバッタンゴや鎌切り裂きジャックなど。
「おらっ!」
瀬田が、鎌を弾いて鎌切り裂きジャックを横に凪払う!
返す刃で、もう一体を仕留めると素材と魔石になる。
壬生先輩は、人形の紙切れを放ち式神を放つ。
鷲みたいな魔獣が、爪と嘴でバッタンゴを切り裂く。
「てい!」
「やあっ!」
他の部員たちも負けじと魔物を倒して行くのを見て僕は、焦燥感に駈られる。
荷物持ちはなにも出来ない。
七瀬葵や愛川愛美は、「重たい荷物を持たなくて戦いやすい」と言ってくれるけど、部員の中には荷物しか持てないのかと蔑んでいる奴もいる。
主に瀬田のような戦闘職のような奴らだ。
「ほらよ、荷物持ち。しっかり持ってろよ」
瀬田がさも当たり前のように魔石や素材を渡してくる。
「あいよ」
なんでもないように受けとる。気にしたら負けだ。
「ちょっと、瀬田!もっと感謝しなよ!」
「あ?なんでだ七瀬?」
「あんたが伸び伸びと戦えるのは、里中が荷物持ってくれるからだよ」
「ふん。荷物持ちしか出来ない奴をパーティーに入れてやってるんだからいいだろう」
「お前、部長じゃねーだろ!」
「まあまあ。七瀬口が悪くなってるよ」
だんだんとエキサイトして来たので、慌てて止める。
「里中もなにか言ってやりなよ」
「まあ、瀬田は口は悪いけど言ってることも事実だしな」
所詮スキルが、『荷物重量無効』だけだから幼い頃は絶望したけどね。
今は、探索に連れていってもらえるだけで充分だ。
その事を話すと、瀬田は理解出来ないと言うように歩いて行ってしまう。
「やれやれ。あいつの良いとこは顔だけか~」
「相変わらずはっきり言うな」
「まあね。でもこれでも良い奴には言葉を選んでるよ?」
ダンジョンを歩きながら答える七瀬。確かに。
瀬田のような奴にはハッキリとキツいことも言うけど、性格が悪くない人にはちゃんとした対応をしてるかな。
ダンジョンの散る梅を眺めながら歩いていると七瀬は続きを話す。
「私、昔は地味で目立たなくていじめにもあってたことあるんだ」
「え、そうなの?見えないけど」
七瀬は、どちらかと言うと知的でクールな見た目だけど実際のとこは話しやすい。
「でも。きらきらしてる人たちを見てたら自分も頑張りたいなって思って」
自分から積極的に話したり、オシャレを研究したりしてリア充のグループと関わるようになった。
「そうだったのか」
こんな時に頑張ってるなは違うだろうし。
そもそも僕はリア充ではないし。
七瀬は、リア充とかそう言うことは気にしないから。
「へへ。今の話しは気にしないでね」
「ああ。でもなんで俺に?」
「まあ、ああ言う奴に辛く当たられるのは君だけじゃないってね。味方はここにもいるよってこと」
そう言って笑う。それはなんか嬉しかった。
つづく




