土日に君と妹と.19
「やったね、お兄ちゃん!勝った~!」
ぴょんぴょん跳びはねながら抱きついて来る。
「お、おい、恥ずかしいから止めてくれ」
「照れるな、照れるな~。兄妹なんだからいいでしょ~」
にこにこしながら言われると止めづらい。
咲ちゃんもとことこ歩いてきて僕たちをハグしてくる。
「勝てて良かった」
「どうも」
「ぷ。どうもなんて他人かよ~」
そうだね。気づけばぼっちじゃなくなってた。
いや、家族がいたからぼっちではなかったんだけどね。
「では、僕も抱きつこうかね」
ガバッと黒野が抱きつこうとした瞬間、身体の向きをずらして黒野が畳の上にバタンと倒れる。
「そんな~」
「えっち。今、私に抱きつこうとしたろ~」
「おい。柚子に抱きつくな」
その発言は、聞き捨てならない。
「み、みんなと一緒でハグだよ?ハグ。ヒヒヒ……」
「「「…………」」」
最後の笑いがエロいんだけどね。下心がないとは思えない。
「え?なんですか、勇気先輩!?」
いきなり僕に頭をポンポンされて慌てる。かあっと表情が赤くなっている。
「お兄ちゃん、そう言うのは私にもしてよ~」
「いや、恥ずかしい」
「いやいやいや、私にする方が恥ずかしくないですか~?」
咲ちゃんは、恥ずかしそうに頭を押さえてうううと唸る。
ともかくこれで、瀬田との勝負は決着か?
「すまなかったな、里中。迷惑かけた」
「いえ。でも、こいつ最近酷いですよね?」
「私も思ってた。元からプライド高くて、弱い奴を見下すとこあるけど」
七瀬も同意する。
「いや、それ駄目でしょ~」
「いや、それ駄目じゃん!」
咲ちゃんと柚子のツッコミに苦笑するしかない。
なにか、理由があるのだろうけど、僕が聞いても話しはしないだろう。
「ともかく、こいつにはてょっかいかけないように言っておくからな……それと、すまなかった」
いきなり、壬生先輩が頭を下げたのでびっくりした。
「ちょ、ちょ!」
「ちょいワック?」
「そうじゃなくて!頭を上げて下さい、壬生先輩!」
柚子の茶々は、軽くあしらって言う。
「いや。部長の僕がしっかりしなかったから、瀬田が増長して里中が追い出される羽目になった」
「そうだぞ、頼りない部長だな~」
「七瀬、ちょっと静かに」
「はいはい」
ホント、見た目は大人しいのに恐れ知らずと言うか。
納得行かないことにはハッキリ言う子だからな。
「でも、あの時はあれで良かったと思います。
僕が行動したこととは言え、呪われてしまって。
みんなどうして言いか分からなかったし」
「しかし、そのせいで君は、回りから……その」
言いにくそうにしている。僕は苦笑する。
「しょうがないですよ。人間なんてそんなものです」
人を化け物呼ばわりする人たちなんてそんなものだ。
それでもまだ、心配してくれてくれる人がいるから。
「……勇気先輩」
「言い訳ない」
「柚子?」
「言い訳ないでしょ!お兄ちゃんがみんなの変わりに犠牲になって、このぐぶ……おっと。
この人に馬鹿にされるなんて、あって言い訳ないでしょ!」
柚子の剣幕に押し黙る。黒野だけは、瞳をキラキラさせて「かっこいい」と呟いている。
先輩にハッキリ言えることは格好いいけどね。良い妹だよ。
「柚子。ありがとうな。僕のために怒ってくれて」
「……えへへ。いいってこった!」
怒ってたのに撫でてやると頬が緩んでいる。なんだ、その口調は。
「あの時、なにがあったの、お兄ちゃん?
話してくれないからびっくりしたよ」
そうだよね。いきなり呪われて帰って来たらそうなるよね。
「私も聞いてみたいです」
「僕もかな?」
黒野は、疑問系か。まあ、いいけど。
「……まあ、いいけど。ホントに大したことないよ」
そう。あれはまだ僕がダンジョン部にいた頃で。
まだ、春の足音が遠かった時だ。
つづく




