表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/50

土日に君と妹と.18

「なんだ。待ち合わせは昨日の場所だろ?」

「ふん。今日は探索に来る奴もいるだろ?

だから、別の場所にした。着いてこい」

顎でしゃくるととっとと体育館の方に行ってしまった。


しょうがないので僕も着いていく。

体育館の隣。そこにある古ぼけた建物は、鍛練場で冒険者たちが腕を競いあっている。


ほぼ、ダンジョン部が独占しているのはしっている。

他の剣道部や柔道部が使用してないのは、ダンジョン部が命をかけている部活だからと使わせないからだ。


部長の壬生先輩は、そゆなことはないがこの瀬田が追い払ってしまうのだ。


ズカズカと鍛練場に入って行く瀬田に続いてくつを脱いで入ると、懐かしい畳の冷たい感触。


昔は、弱かった僕はこそこそと鍛えていたもんだ。

弱くて他の部員も相手してくれなかったから。



「七瀬に、壬生先輩?」

「やあ」

「久しぶりだな、里中」

「お久しぶりです。どうしてここへ?」

「……いや。決闘と聞いて。部長としては黙って見ていられない」

「まだ、そんなこと言ってんですか?

稽古ってことにすれば問題ないでしょ?」

相変わらず先輩にもナメた態度だな、こいつは。

少し考えれば分かるだろう。学校の中で威張っても、井の中の蛙だって。


卒業してもこいつはこんにに偉そうにしていられるのか。


「……どうしてもやるなら立ち会うしかないが。里中もそれでいいのか?」

「はい。大丈夫です。迷惑かけませんから」

僕があくまで落ち着いて答えると、忌々しそうにこちらを見てくる。


「いいから、とっとと始めるぞ!」

竹刀の立てかけているとこへ行くと竹刀ではなく、木剣を持って来る。そして、一つを放る。


「ちょっと、瀬田!木剣じゃなくて竹刀!」

「いいだろう別に。より実践的な稽古だよ」

自信ありげににやにやしている。


「勇気先輩」

「大丈夫だから、見てて」

「ふん。かっこつけてんな。お前なんて『荷物持ち』のスキルしかないだろうがよ、化け物」

馬鹿にしたように笑う。荷物持ちも立派なスキルなんだけどな。

重量を感じないで荷物を運べるから、サポートには重宝されている。


まあ、今はそのスキルはある理由で手放してしまったけど。


「……すまないな、里中。うちの部員が」

「いえ。でも僕が勝ったら部長らしくしてくださいよ」

「……そうだな。ああ。俺は…」

なにか言いかけた壬生先輩の脇を通り抜けて前へ出る。


「ごめんね、うちの瀬田が」

「いいよ、七瀬。まあ、あいつのスキルは有用だからあいつも天狗になったんだろ」

「うん。でもそれはちょっと違うかな」

「ん?違う?」

「おい!女子とイチャイチャしてんなよな!さっさとやるぞ!」

僕は、すまなそうな表情の七瀬の肩を叩くと、瀬田の方へ。



「お兄ちゃん!そんな傲慢ぶっ飛ばせ~!」

「勇気先輩!気をつけて!」

「そんな傲慢先輩を倒せ~!」

後ろのギャラリーのせいで集中が出来ない。

応援は嬉しいんだけどな。瀬田の方には、同じクラスの笹岡がいる。

瀬田とは仲良くてつるんでるカリスマ美容師みたいなイメージのイケメンだ。


そいつは、なにを考えてるのか応援するでもなく、ただ静かにこちらを眺めてる。



「審判は、不肖この壬生が務めさせてもらう」

「はいはい。早くしてくれよ」

「ルールは、一本いれるま……」

「そんなの生ぬるい!どっちかが倒れるまでだ!」

そう言いながら、瀬田は斬りかかってきた。おいおい。


瀬田の『先制攻撃』をもろに食らう。

更に、振り回した袈裟斬り。滅多打ちに攻撃してくる。


「ははは!どうした里中!怖いのは見た目だけか!」

「………」

容赦なくバカスカ殴ってくる。

「壬生先輩、まずいよ。止めないと!」

「あ、ああ」

止めに来そうだったので、手で制す。


「なんだ。化け物!叩かれるのが趣味だなんて、変態だな!」

そして、瀬田の二つ目のスキル。『十連撃』で打ちまくる。


重さよりも、速さ重視で木剣を繰り出す。


しばらくして、打ち疲れたのか距離を取る。


「……気が済んだか、瀬田」

「な……に!?」

僕がピンピンしているので驚いている。


「お前じゃあ勝てないよ」

「うるせー!なんでだ!?なんで、倒れねー!?」

また、打ち据えて来る。七瀬が止めようとするも、壬生に制される。


「勇気先輩!」

「大丈夫だから」

「スカしてんじゃねーぞ!?」

瀬田の横薙ぎの一撃を防ぐ。


「お前がなににイラついてるか知らないけど、僕に当たらないでくれ」

「うるせーな!荷物持ちがぁ!」

また、十連撃だ。その一つ一つを捌いていく。

圧倒的な実力差を分からせるために。


「さあ。次はどうする?」

「おのれぇーーー!」

まるで、悪役なんだけど。その瀬田が木剣を振り上げた瞬間に踏み込んで胴を打つ。


呪いの閃撃!



黒い禍々しいオーラをまとった木剣を振るう。



ズドン!胴を打つその凄まじい音に瀬田の動きが止まる。


あ。あばら何本かいったかも。


「がっ!」

木剣を取り落とし倒れる瀬田。

「勝負あったな。お前の勝ちだ、里中」

静かに言う壬生先輩。なんだか勝利しても嬉しくないな。楽しい試合でもなかった。



つづく

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ