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土日に君と妹と.16

日曜日の朝。今更ながらなんであいつとバトルしなければならないのか。

喧嘩だと学校で処分されるので、なにかあったら交流試合と言うことにしてある。




まあ、準備と言ってもすることはない。

負ける要素がどこにもないからだ。

決して天狗担っていると言う訳でもない。


瀬田はどうせ侮って来るだろう。あの時のままの僕だと思って。



「さてと、行くか」

階下へ降りると猫が寄ってきた。

「にゃ~」

すりすりして来たので抱き上げて撫でてやる。

「とろろ、元気だな」

「え。とろろにするの?」

「そうだよ」

「美味しそうな名前じゃないの。食べたくなるよ」

母親は、のんびりテレビを見ながらそんなことを言う。

父親は、新聞を広げている。たまにお茶を飲んでチラリと僕の手元を見る。


とろろを触りたいのだろう。

しかし、とろろの気の向くままにさせるのが一番。

いたずらをしない限りは、好きにさせる。


しかし、猫に似てるけど魔物なんだよね。

どの種類か、図書館で調べてみようかな。


軽く朝飯を食べて出掛けようとしてふと気づく。

「あれ?柚子は?」

「そう言えば、朝早く出掛けたわね。友達に会うって行ってたわ」

「そっか」

今日のことが分かってるけど、友達と遊ぶか。

まあ、危険なダンジョンで探索するよりはその方がいいかなと、兄としたは思う。





「じゃあ、俺も行って来ます」

「気をつけてね」

「にゃお~」

親はあまり詮索してこない。しかし、その方が楽でいい。

まあ、今の僕に友達なんていないと思ってるのかもだけど。気を遣ってるってことか。



外に出ると生憎の雨。傘を傘立てから取り出して歩き出す。


これだと、桜も散っちゃうだろうなと残念に思いながらも、駅へと向かって歩いていく。


まあ、休日だから人も多い。

色とりどりの傘が、駅へと向かっているのかもしれない。


傘はいい。僕の見た目を隠してくれるからだ。

通行人に変に思われたり、中学生に馬鹿にされたりしない。


まだ、精神的に成長の途中だからか。

そう言う風に馬鹿にしてくることがあるけど、無視に限る。


喧嘩をしたい訳じゃないし。こっちが強いのも分かっている。


それに、ちゃんとしてル人は馬鹿にしたりはしないから。相手にしない。


そんなつまらないこと考えるよりは、新しい新作の小説でも考えよう。


柚子は、漫画ばかりだけど僕は、小説はどっちも読む。

大人向けのも、ラノベも。本屋で新刊が並んでるのを眺めるだけでわくわくして来る。


それに、読んでると嫌なことを忘れられるから。

空想の世界に入っていられるから。





「お~い!お兄ちゃん遅いよ!」

駅の改札には、何故か柚子と咲ちゃんがいた。

どうして二人でここにいるんだろう。


「先輩、おはようございます」

「あ、ども。おはよう」

いつもの明るさで、ぺこりと頭を下げてくるので僕も釣られて頭を下げる。


「お見合いかよ」

「今は、マッチングアプリじゃないのか?」

「そう言うことじゃなくて」

「それはこっちの台詞だ、柚子。

なんで、ここにいるんだ?」

「ふふ。そりゃあ、応援?」

「いや、僕と瀬田の問題だからな」

そう言うと頬を膨らます。


「いいじゃん、いいじゃんケチ!お兄ちゃんの力を見せてもらおうじゃないか」

柚子にも、ステータスを内緒にしてたっけ。

まあ、喋られても困るしな。


「あ、私は探検部なので行きますよ~」

「そうだね。しょうがないね」

「あ~!咲先輩だけずる~い!えこひいき~」

「お、おい!声が大きい」

回りの通行人が、ちらちらとこちらを見てくる。取りあえず移動しよう。


自然の流れで腕を差し出すとそこを掴んでくる咲ちゃん。

柚子がにやにやしながら見ているが、意識したら負けだ。照れくさくて死んでしまう。


改札を潜り、ホームで電車を待っていると柚子が「お兄ちゃん、あれ」と目で示す。



人混みをかき分けやって来るのは黒野だった。

「やあやあ、おはようございます、みなさん。

こんなにもここにファンが沢山いるとはね」

「「いね~よ」」

女子二人の言葉にどこか嬉しそうな黒野。

こいつはこれで、防御力を高めるのだ。いや、普段は別にいいだろう。


「おはよう、黒野。しかし、お前も来たのか」

「お義兄さん、冷たいな~。僕ももう探検部ですよ」

「「「え?そうなの?」」」

みんなの声がハモれば黒野はへこむ。

いや、だって聞いてないし。入部届けも受け取ってないし。


「入るなら、ダンジョン部活の方がいいんじゃないか?」

遠出のダンジョン行くのも部費でまかなえないし。

ダンジョン部だと、学割が利くから武器や防具。道具などは少し割引で買えるけど、探検部は部とは名ばかりの同好会なのだ。


同好会は嫌なので、せめてもの反発とばかりに探検部とした。


そんなことを電車内で話しても黒野は探検部がいいと言う。

「でもでも、人数が多い方が部に昇格してもらえるのでは?」

「咲先輩の言うとおりですよ~。

そりゃあ、お兄ちゃんは咲先輩と二人きりのイチャラ部の方がいいんだろうけど」

「な、なに言ってんだよ。そんな訳ないだろ?」

「ふ~ん。そんな訳ないんですか?」

「えと、咲ちゃん?そう言う意味ではないけど」

なんて言ったらいいのか分からない。

付き合ってる訳でもないし。こんな僕に恋なんてと考えるのはしないようにしている。傷つきたくはないから。


「咲は、僕と付き合うべになんだ~!」

「静かにしてください。周りの乗客に迷惑です」

「他人行儀が、ぐさぐさ刺さるよ、咲」

「呼び捨て禁止!ラインブロックするよ~」

「へ、へ~い。ごめんなさい」

長年のやり取りなのだろうから、息が合ってる。

まあ、黒野の行動はともかく、そのストレートさは羨ましい。


しかし、嬉しいこともある。

僕のことを見ている乗客もいるのにみんな、気にしないでくれてるから。



つづく


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