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土日に君と妹と.15

飛ばして先の内容を投稿してました。すみません!

その日は疲れたので、地上に戻ることにした。

地図を見ながら、一旦次の階層へ行こうとしたものの、薄い緑色のバリアーみたいなのが張られていて進めなかった。


「なんですかね、これ?」

「結界か~。黒野先輩、どぞ、体当たりして下さい」

「柚子、鬼か!」

「これは、喜んでぁぇぇぇぇぇぇ!?」

自らバリアーに突進してびりびり震えている。

そして、ドMのスキルで黒野の防御力が一時的にアップしている。もう、帰るんだけどね。


「………なにか、カギが必要なのかもね」

「ま、取り合えずギルドに報告して帰りましょう」

咲ちゃんのエスコートをしながら僕たちはエレベーターの方へ。黒野も這いずりながらついてくるのでポーションを渡す。


「ありがとう、ありがとう、お義兄さま」

「お義兄さまと言うな」

エレベーターに乗ると、鎧狸たちとのお別れだ。

寂しそうにしているけど、またいつでも会える。


「ぽこぽん!」

「ぽんぽこ!」

「ありがとう、案内してくれて!」

「また、一緒に冒険しましょね」

「バイバイ~!」

「くふふ。たぬきぃそばを食べながら思い出すから」

黒野、おかしなこと言うな。

ちょっと寂しいけどまた会おうな。

エレベーターが閉まり、一階へ。




地上へ出ると、もう夕方か。

空が次第にオレンジに染まる時間帯。

あの時のことを思い出す。



「そ~言えば、知ってます?逢魔ヶ時ダンジョン」

「ああ、聞いたことあるある!」

「僕の心も恋の迷宮入り~」

柚子の言葉にハッとなる。それは、冒険者の間に噂になっている己を鍛えられるダンジョンで、見つけた者はほぼいない。



僕はあの日。ダンジョン部を追い出された日。

とぼとぼと歩いていると、気づけば知らない場所にいた。


ここは、どこだろうとスマホの地図を見ようとしたら、路地裏が輝き出した。

吸い寄せられるようにそっちへ行って見たらそこにはダンジョンの入り口があって僕は、なかば自棄になってそこへ突入していた。

どうにでもなれと思っていた。






「お兄ちゃん?」

「ん?ああ、なんだい柚子」

「どしたのボーッとして?」

「いや、なんでもないさ」

「夕飯どうしよっか?」

「ああ。親、今日遅いんだっけ?」

「うん。父さんは仕事だし、母さんは同窓会て言ったじゃん」

そうか。そうだったな。となると。



「食べて帰ろ?」

「そうだな。行こう」

「二人もどうですか?」

「うん、行く行く~!」

「ぼ、僕もいいの?」

「まあ、お疲れってことで」

そう。結局競争する必要はないからね。後は、明日の勝負か。




ファミレスに着いてふと思う。友達と食事をするのは久しぶりだな。

僕がこうなってからは、避けたり避けられたりだから。



ウェイトレスに案内されて、各々が注文する。

チラチラと視線を感じたが、無視をする。


咲ちゃんがチーズを好きだと言うことを知り、好きな音楽とか点字で読む本のことも知った。よく見る動画とか。


「え?勇気先輩て、動画見たことないんですか?」

「うん。どちらかと言うとTVのバラエティーの方が好きかな」

「ですか~。私もたまに見ますけど」

「お兄ちゃん、古いから~」

「やかましい」

ちょっとでも咲ちゃんのことが知れて嬉しかった。

こんな風に友達と雑談して、そんな当たり前のことを手放していた僕は馬鹿だなと。


少なくとも、向こうから離れない限りは僕から離れる必要はないのだと知った。


「さて。このファミレスには僕のファンが沢山います」

「「沢山いません」」

まあ、こんな友達もいるけど。賑やかになっても嫌な気分にはならなかった。


ファミレスの前の通りに咲く夜桜が静かに散らしていて、綺麗だった。



つづく



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