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土日に君と妹と.13

黒野が、化け狐の攻撃を防ぎ吹き飛ばされる。

そうだった。タンク役かと思いきや魔法防御専門だから、物理攻撃には弱いんだった。

紛らわしいことに大盾を装備しているから。



「ぶべべ!」

「黒野、大丈夫か?」

「大丈夫。僕のファンのためにも!」

ぐわっと立ち上がるとまた盾を構える。七瀬の前に。

七瀬は別にお前のファンではないと思うけど。


鎧狸の音波攻撃にも化け狐はあまり効いてないみたいだ。流石は、ボスだね。

どこか弱点はないものか。僕は目立たぬように倒したいので、化け狐の攻撃を刀を抜かずに弾いている。


「みんな、お待たせ~!」

「真打ち登場だよ!」

ジンちゃんと涼の二人が来てくれたから、仲間のことは黒野たちのことを任せられる。


「癒し之祝詞!」

柚子の回復術で、七瀬たちの傷は癒されるが、瀬田は昏倒したままだ。


当時の僕よりも強かったあいつが気絶するなんて。

化け狐の攻撃には気絶の効果があるのかもしれない。


「私に任せて!風の剛球!」

咲ちゃんの新しい魔法!?風の球が、凄い勢いで化け狐を打ち抜く。

その度に、痛く苦しむ化け狐。

そして、僕も二撃三撃と打ちつける。

しかし、すぐに回復しているみたいだな。


なら、回復を上回る攻撃をするしかないんだけど。

「さて、どうするか」

「私たちもサポートしましょう」

ジンちゃんが、胃や心臓の模型を飛ばして化け狐にぶつける。涼が僕の側に来る。


「お兄ちゃん、あいつ僕たち家族を殺した奴だ」

「……思い出したのか?」

「うん。初心者パーティーの僕たちを食べたんだ」

「……そうか」

「私も思い出しましたよ。涼のために頑張らないと行けませんね!」

なんだか、やる気を出してる人体模型。

なにか思い出したのかも。


しかし、化け狐は容赦なく狐火をいくつも放ったり尾の針を飛ばして来る。


こちらにダメージが蓄積して来る。それならば!

化け狐は、更に強力な狐火を飛ばして来たので僕は刀を抜いて斬り裂く。炎が飛び散り視界を悪くする。


咲ちゃんたちは、無事のようだ。

そして、視界が炎で遮られているその隙に放つ刀剣技。今は呪いの力は使わない。


「神速之居合い抜き」

ボソッと呟いて放つ技は、一瞬の煌めき。

気づいた時には、化け狐はもう真っ二つだった。


消えながら、素材になる。毛皮とかが沢山だから、コートとかに使えるかも?




「……涼。倒したよ」

「うん。お兄ちゃん見てたんだね」

「泣き笑いの顔するなよ。子供は笑顔の方がいいよ」

とは言っても我慢なんて今の時代は流行らないか。

僕は、呪われてから我慢を覚えたから。

周りに馬鹿にされても気味悪がられても。スルーしてきたから。


でも、子供は我慢なんてしなくていいか。

泣いてる涼を静かに見守ろう。


そこへ、ジンちゃんがやって来て涼を抱き締める。

その周りに女性と女の子がいる。透けているので涼の家族かな。


「涼。寂しい思いをさせてごめんな」

「…ジンちゃん?」

「私は、涼のパパだよ」

「パパラッチ?」

無言で黒野にチョップをかます咲ちゃん。

ここは黙って見守ろうね。


「あの化け狐に殺されて私は、逃がした涼と理乃が心配だったから、人体模型に魂が乗り移ったんだ」

「お父さん。僕たち逃げたんだけど、結局……あいつに」

がっくりとうつ向く涼に理乃ちゃんが近寄る。ツインテールの可愛い女の子だ。


「お兄ちゃん、私を守ってくれてありがとう」

「理乃、ごめん。守れなくて」

「いいよ、お兄ちゃん」

「涼、ごめんね。お母さん守れなくて」

綺麗なお母さんも寄って来て家族は死んでなお、再会を喜んでいる。


世界のどこかには、復活アイテムとか魔法がある……らしい。

でも、僕のレベルでさえ覚えられないのだから噂はデマなのかもしれない。


「再会出来て良かったね」

「ホントにね。もう離れるなよ~」

「うう……よかった、よかった」

咲ちゃんたちも涙ぐんでいる。黒野もか。以外と良い奴だな。



徐々に透けていく涼たち家族は僕たちの方へ向くと頭を下げる。


「うちの涼がお世話になりました」

「ありがとう、お兄ちゃん!」

「里中様、春野様、柚子様、黒野様。ありがとう。涼たちのことを思い出せて良かった」

あ、黒野のこと今度は呼び捨てではないんだ。


「でも、気をつけて。まだ、あいつがいる」

涼が注意を促す。あいつってなんだ?

「僕と理乃はそいつにやられた」

「……分かったよ。涼、色々とありがとうな」

「さよなら、涼くん」

「ああ……僕のファンたちが消えていく」

「向こうで仲良くね!」

僕たちのさよならの言葉は、届いただろうか。

涼たちは静かにかき消えた。


涼。あっちで家族仲良くな。

少し、しんみりしているが僕たちの冒険はまだ続くんだ。



つづく


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