土日に君と妹と.11
「うわぁ!咲先輩、スタイルいいですね~!羨ましい!」
「柚子ちゃんこそ~!この触れた感触は……ウエストほそっ!」
女子たちは、カーテンの向こうできゃっきゃ言ってる。なにをやっているんだか。これでも、健康な男子だから気になってしまう。
「……黒野、よだれ」
「ふひっ!?や、やだな~、そんな白い目で見ないでよ、お義兄さん」
見るよ。頼むからお兄さんと呼ばないで。
呆れていると、涼がけらけらと笑っている。
「ははは!黒野はホントにスケベだな~」
「なにを~!このクソガキ!男はみんなエロいんだよ!」
「それを、自慢気に言うなよ」
僕たちが出てくると、咲ちゃんたちがサッとカーテンを開ける。
「お待たせしました。お昼にしましょう」
「そうだよ!お腹空いたねー!お兄ちゃん、なにか作って」
「おい。僕がどうして作る前提なんだ?」
「いいじゃんか、けち~!」
「けち~!」
黒野が、柚子のマネしたもんだからカチンと来た。
そのままでこぴんしてやると、ベッドにまで飛ばされていく。
「いてて!お義兄さんたらなんてことを!はっ!そうか!このベッドでゆずっちと寝ていいと!?」
「殺すよ?」
あくまで優しく言うと、黒野は顔が青くなる。
「う~ん。お兄ちゃんが怒ったよ。
しゃ~ない。私が作ったお弁当を配りま~す!」
「え?」
「ゆずっちのお弁当!お弁当!」
止めた方がいいと、止める間もなく黒野がお弁当の蓋を開けると、中身真っ黒。そう。黒い色の料理ではなくて、黒焦げなのだ。固まる黒野。頑張れ黒野。ドンマイ黒野。
「こ、これは、ホラーですね~」
「ジンちゃんがそれを言うのか?」
戦闘中に胃とか肺を飛ばすあなたがそれを言う?
柚子はあくまでもにこにこと進める。
「さ、どうぞ~」
「う、うむ」
意を決したように玉子焼きだったものを口に入れた瞬間に固まる。
黒野は、呪われてしまった (笑)
ウインドウにそう表示されてますけど!?
「ぼ、僕はコンビニのおにぎりがあるから」
見ると鎧狸たちは、机の影に隠れている。
よほど、怖かったのかもしれない。
「もう、なにさ~。私が食べるもん」
「ぼ、僕もた、た、食べますよ」
凄いメンタルだ黒野。すまない。もうちょっとこいつには優しくして上げよ。
「勇気先輩。私もお弁当を作って来たんですけど~?」
「え?」
「なんです、その反応?」
「いや、うん、いただくよ」
柚子のお弁当のトラウマがあるから。
つい、女性の作るお弁当は身構えてしまう。
受け取ったお弁当を開けて見ると……美味しそうだ。
唐揚げに玉子焼き。そしてアスパラを炒めた奴。
シンプルに美味しそうだ。箸を受け取り手を合わせる。
「いただきま~す」
「はい、どうぞ」
パクリと食べた唐揚げも、玉子焼きもうまかった。ともかく、食が進むぞ。
「美味しいよ、うん」
「ホントですか~?えへへ」
咲ちゃんは、安心したように自分のお弁当を食べる。
気配察知がここでも役に立っているのか、おかずを寸分違わずおかずを箸でつまむと口に運ぶ。
「ん?どうしました?あ~んをしてほしいと?」
「ち、違うよ。よく戸惑わずにおかずを箸でつまめるなって」
「ふふ。私の気配察知を侮っては困るね」
「得意気なのは分かるけど、なにその芝居かかった言い方は?」
「えへへ。まあ、気配察知のお陰で助かってますよ~」
それにしても、咲ちゃんはどうして呪いなんてかけられたんだろう。
でも、今はいいか。この後はフロアボスが待ってるからね。
「ゆ、ゆ、ゆずっちのお弁当の方が美味しいもんね~」
黒野、視線が定まってないよ。でも、よく食べてるな。見直した。
涼は、ふわふわも浮いて少し羨ましそうにしていた。
「大丈夫ですか、涼くん」
「うん。お弁当か~。生きてたら美味しいご飯食べれたんだよね」
「そうですね。でも、あの黒焦げ弁当はちょっと……」
「ちょっと、ジンちゃん?浄化しちゃうよ~」
しんみりした空気を明るさに変える柚子。
確かにな。涼はもう食べれないんだよな。生きてればこそって奴か。
つづく




