出会い.2
春野咲は、それなりに強かった。風の魔法を使い、亡霊足軽や兜スライムをまっぷたつにしていく。
ちなみに合戦に出る侍の被る兜を被ってるスライムのことを兜スライムと言う。
このダンジョンは、和風の敵が多いかも知れない。
「春野は、結構強いんだな?魔法も使えるし」
「えっへん。頼りにしてください。それに、お金を稼がないと行けないんです」
「だったら、バイトでいいんじゃないか?」
だけど、ふるふると首を横に振る。
「それじゃあ駄目です。退屈です」
「退屈?」
「だって、毎日同じことの繰り返しって飽きません?」
「まあ、そうだね」
その気持ちは分かるけど、親は怒ったりしないのかな?
これは、危険な行為でもある。僕みたいな便利スキルがあれば別だけど。
「それに、バイト先にしつこいセクハラ親父がいたんで、辞めました」
思い出して、不快な表情と恐怖を感じているのか、少し震えている。
こんな時なんて言って言いかわからない。手を繋ぐ春野の手に力が込められる。
そして、時折背後を気にしてる。
「……時折、背後を気にしてるけど、なにかあるの?」
話題を変えようとしたものの、いい話題じゃなかったかな。
「いえ。なんでもないす。それより先輩はどうして探検部なんです?だって、探検部は先輩だけですよね?」
「ああ。まあちょっとね」
苦い思いが蘇る。おっといけない。警戒はおこたらないようにしないと。
おっと。宝箱発見。中にはポーションがあった。
魔法とか、手に入るといいんだけど。
それを春野にわたすと、遠慮された。
「いいですよ。一緒にいてもらえるだけありがたいです」
昨今の後輩はなめて、ため口を叩く奴が多いけど、この子はちゃんとしちるので少し好感を持った。
「後輩が遠慮するなよ」
もう一度わたすと今度は、受け取る。
「ありがとうございます」
「いいって。職業は、魔法使いなんだろ?回復アイテムは持っておいた方がいいよ」
「はい。そうですよね」
にこやかに微笑む。でも、魔法使い一人じゃ大変だろうな。
そう思うと察したのか、事情を説明してくれる。
転職は、最寄りな神社でしてもらえる。
基本職は1000円だが、中級職は10000円。上級職は50000円だ。
学生には痛い出費だ。それとダンジョンで見つけられる職業用のアイテムと言うのもあるらしい。他にも欲しい漫画やゲームがあるから。
更にレア職と言うのもあるらしい。それもダンジョンで見つけるしかないらしい。
「最初は、友達とパーティーを組んでたんですよ?
でも、みんな危険なことはやっぱり嫌だって言われて……」
「そうか。ま、今日のとこは僕が一緒に行くよ……嫌じゃなければ」
「嫌じゃありませんよ?よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて、元気よく歩き出す。
そこが、不思議なんだ。普通だったら僕みたいなの相手にしないか、遠慮して声をかけないかだと思うんだ。
「あ、春野は魔法使いなんだから、僕が前に行くよ」
「お、ありがとうございまーす!先輩、紳士ですね」
「ぼっちだけどね」
「マジかー。とてもそうは思えません……と!」
話しながら、風の魔法でスライムを切り裂く。
エアカッターと言う初級の魔法だ。
「いやいや。廊下で一人でポツンとしている僕を見たことない?」
鉄傘を構えて、眠らせネズミを袈裟斬りにする。叩いただけだけど。
あいつはすぐに、眠らせてくるから気をつけないといけない。
「ああ~。そうなんですか?先輩やさしそうだけど」
春野は、小首をかしげると、天井に止まるコウモリに風の刃を放つ。
真っ二つ。素材となって地面に落ちる。
春野、ホントに強いな。ダンジョンで屈んでた時は心配したけど、手を差し述べなくても良かったかな。
いや、そう言う訳にもいかないか。
僕たちは、魔物を倒しつつ時折手を繋ぐ気恥ずかしさを覚える。
ホントにこれで春野の魔力は回復してるのだろうか。
「はい。そうですよ」
それは、スキルにある『手を繋ぐ』だそうです。
それによって、魔力が沸き上がって来るそうだ。
つづく