土日に君と妹と.8
「ふはぁ~!黒野爆誕!」
「おわっ!なんだこいつ!」
鎧狸たちがびっくりして僕の背中に隠れている。
咲ちゃんはびっくりして胸の部分を抑えてる。
そりゃあ、ドキドキするよね。いきなりハイテンションで石化が解けたんだから。
「ふぅ。僕が復活したからもう大丈夫だよ、咲ちゃん」
「えと、もう帰ってもいいよ。私は過保護は嫌いです」
「そんな~。君を守れるのは僕しかいないと思うんだ」
頼りない身体で胸を張る黒野。蹴ったら折れてしまいそうだ。
「て言うか、石化してたじゃん」
「んん、咲ちゃんのいけず~」
そんな台詞初めて聞いたな。
でも、黒野なりに咲ちゃんを心配しているようなら、取りあえずここから出るまで協力してもいいかもしれない。
その旨を二人に伝えると、思いっきり嫌な顔をされて黒野はがっくりと膝をつく。
「そうか~!貴様かぁ~!お義兄さんがいるから、咲ちゃんは僕になびかないんだなぁ!」
「誰がお義兄さんだ、だれが!」
「それは違うよ。黒野は自己満足で私を守ろうとしてただけでしょ?」
「う!」
「手元に置いて置きたかった感じ?」
「うう!」
「さいて~、ストーカーなの?」
「柚子、手加減して上げな」
僕の言葉に呼応するかのように鎧狸たちは、お腹をポンポン叩く。
昨日拾った猫を連れてくれば鎧狸たちと仲良く出来たかもな。
ここは、次の五階へと続く通路の途中。空き教室の科学室だ。
どうやらここで親子共々住んでるらしい。
そして、一番謎なのは人体模型が動いていることだ。
いきなり教室に入ると、導いて来たのだ。
咲ちゃんは、きょとんとしていらるものの柚子は、思いっきりビンタしていた。
お陰で、目玉と胃腸が外れて落ちて、場が騒然としていた。
「いやいや、お仲間が元に戻ってよかったですね~」
人体模型は、僕たちに紅茶のペットボトルを分けてくれる。
せっかくなのでここで、お昼にすることにする。
涼のお陰でアイテム袋がグレードアップしたので、コンビニで買ったパンやおにぎりなどが、腐ることもないからね。
涼は、子狸たちと遊んでいる。涼の記憶は戻るのかな?
「ねえねえ、えーと」
「私は、人体模型のジンちゃんです」
「おお。勇気先輩。人体模型が喋ってますよ~!
一緒に取って動画サイトに上げてもいいですか?」
「動画?それは、どうかまな~?」
「「「……………」」」
ジンちゃんの親父ギャグにみんな固まる。
鎧狸たちは、慣れているのか特に気にしていないようだ。
「じ、ジンちゃんは一体なんなんだい?」
「黒野も一体なんなんだい?」
「さ、咲ちゃんそれは、どうかと……」
咲ちゃんを嗜めて話しを聞くことにしたのだが、気づいたらこうなっていたと言う。
「私は、いつから人体模型なんでしょう?」
「さ、さあ。それはちょっと僕にも分からないんだけど」
距離が近いな。リア充並みに。
自分が何者か分かってないみたいだから、記憶喪失?
「そうだ、ジンちゃん。ここに性格の悪いイケメン来ませんでした?」
「こらこら。瀬田はあれでも先輩だからね~」
「咲ちゃんもね。呼び捨てだよ」
「てへ。呼び捨てごめんていうでしょ?」
それは、斬り捨てごめんじゃないの?
まあ、どっちにしても呼び捨てはよくないよ。
僕は、そう思うけど柚子からすれば古臭いと言われる。
「勇気先輩、いつものいいです?」
「え、あ、ここで?」
みんながいる前で恥ずかしいんだけどな。絶対に冷やかされる。
僕と咲ちゃんが手を繋ぐと、目を丸くする柚子と固まる黒野。
いや、手を繋いだだけだからね。
「ヒューヒュー!アベックて奴だな!」
「涼くん、ふるっ!いやいやそれはいいとして、二人は付き合ってるの?」
柚子が、驚きから喜びの表情になる。だよな。
僕みたいな呪われた奴に恋人が出来るなんて、柚子だって思わなかったんだろう。
でもごめんな。ぬか喜びさせて。
「あ~。これは違うから」
「そうです。私のスキル『手を繋ぐ』で魔力を回復出来るからアイテムを節約出来るんです」
にこにこして言われるとこちらも嬉しくなる。
ホントは嫌だったら悪いしね。
「むき~!なら僕でもいいでしょうが~!」
手をワキワキさせるので引きそうになる。
でも、それを態度に出したらかわいそうだ。
「え~!だってキモいんだもん~」
咲ちゃん。思ってることなんでも言っては駄目だよ。
でも、黒野はちょっと嬉しそうに見えるのは気のせいかな。気のせいだよな。
「では、私と手を繋ぎますか?」
「え、遠慮します!」
黒野が何故か僕の後ろに隠れる。
食事を終えて、五階へ向かうことにするものの何故か、ジンちゃんと鎧狸たちが着いてくるんだけど?
「くぅ~!柚子ちゃん僕を癒してくれます?」
「くれませんよ、もちろん。
でも、そっか。付き合ってないのかよ~」
そして、ちょっと残念そうに言う。
まあ、ともかく先へと進もうかとみんなにお別れを告げようとしたんだけど。
「えと。なんでみんな着いてくるんだい?」
「黒野。私はずっとここにいて寂しいのです。
せめて、五階のフロアボスまでは案内させてもらえませんか?」
鎧狸たちも、こくこくと頷いている。
しかし、エリアボスか。ここ以外のダンジョンでもボスとバトルしたことはあるけど。
「へえ。道案内なら便利ですね、咲ちゃん」
「そうだね、ありがたいね」
柚子の笑顔に、咲ちゃんもにこにこして返す。
さて、賑やかでいいんどけど。魔物も出るからな。
そう言えば、魔物を連れている冒険者はいるのだろうか?
でも、アニマルティマーとかいたか。
「さて。里中様、柚子様。春野様に涼様。そして、黒野」
黒野だけ呼び捨ては可愛そうだよ!
でも、本人はそんなことは気にしてない。
うちの妹を見てでれでれしてるので、柚子は咲ちゃんの影に隠れてる。
「この先は、魔物もつよくなるのでお気をつけを」
恭しく一礼すると僕たちの背後に位置どる。
案内してくれないのかな?
つづく




