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出会い.10

どうしてこんな上層階で難し目なのか。

僕には斬り抜けられる。でも、群れ狼たちは魔物と言うより動物に見えるから。出来れば殺したくない。


でも、ここで倒さないと他のパーティーにも危害が及ぶんだよな。


「咲ちゃん!背後頼む!」

「はい!任されました!」

僕たちは背中合わせになって構える。

まあ、咲ちゃんに危害が及びそうなら非情になるしかない。


群れ狼たちは槍やら刀で攻撃してくるのを見切って斬る。袈裟斬りからの逆袈裟。そして突き。

咲と離れないように倒していく。


「呪いの力」

名前なんて着けてない。僕の身体の黒ずんだ部分が影のように地面を這って群れ狼たちをその影の中に引きずり込み打撃を叩き込む。


その瞬間だけ僕の肌は普通に戻る。しかしそれも、一時。すぐに呪われた状態に戻る。群れ狼たちは倒れて魔石となる。すまない。


チラリと咲ちゃんの方を振り返ればそちらも方は着いたみたいだ。


しかし、まだ。母親らしき狼と子供たちがこちらを睨みつけてくる。


「勇気先輩?倒さないんですか?」

咲ちゃんが不思議がる。そうか。識別は出来ても親か子供かは出来ないのかな。


「……いや。子供の群れ狼みたいなんだけど……」

「……あー。そうですね。逃がします?」

「え?いいの?」

「確かに魔物は危険だけど、私だって鬼じゃありませんもん」

良かった。咲ちゃんがそういう人で。

僕らは頷き合うと武器を収めて追い払おうとする。

どこかに隠れてないと他の生徒に狩られるかもしれないから。



「お!あんなとこに魔物いるっしー!」

「ホントだ!やっちまおうぜ!これでレベルアップだぜ!」

「へへ!これで部活の成績悪くてもこっちで結果出せば!」

うちの生徒たちが別の道から入ってきて倒そうとしてる!?

野球部の奴とかテニス部の奴とかが群れ狼を狙ってるので思わず駆け出す。


それは、風より速く。力なんて使いたくないけど。

人が、心を失くす行為をしては駄目だ!



「ひっ!なによあいつ!」

「あいつ、化け物だぜ!他のクラスの奴だ!」

男子生徒がボールをぶつけようと投げるが、居合い斬り捨てる。

「こいつ!なにしてんだよ!」

もう一人が剣を抜き斬りかかって来たので、利き手を峰打ちして剣を叩き落とす。

「……冒険者同士のバトルは校則違反ですよ」

「てめー!抵抗すんなよ!」

「ウケる!化け物は化け物をかばうんだ!?」

一人の女子の髪型が変わった。

それは、咲ちゃんの静かな怒りで。風魔法を操り女子の肩まで長い髪をスッパリと切ったのだ。


「ひっ!」

その女子生徒はぺたんと尻餅をつく。

うわぁ。咲ちゃんにこにこしてるけど笑ってない。


「てめー、一年!いきなりなにすんだ!」

「そうだぞ!俺たちは魔物を倒そうしてるんだ!」

その生徒たちのブレザーを切り裂く。


「やべー!なんだ、あの女は!」

「クレイジーだぜ!」

「私に手を出して許されると思ってるの!」

捨て台詞を吐いて逃げていく生徒たち。

なんか。他の探索者や冒険者から嫌な印象を与えそうだ。



群れ狼たちを見るといまだに威嚇している。まあ、人間を信用できないだろうけどね。


「……さあ、行ってくれ。僕たちは君を襲わないよ」

僕と咲ちゃんは食料を少し置くとその場を離れた。


次会ったらまた敵同士だろうけど。家族で過ごしてほしいって思う。

後、普通の犬みたいで可愛く思えた。






「それにしても、勇気先輩強いですよね?」

「そ、そうかな。普通だと思うけど」

ギクリ。しかし、バレても平気なんだけど目立ちたくないし。


「ほら、まだ上層階だからあまり、敵が強くないんだよ」

「そうです?タワマンの上層階の人はきっと、高いとこから下々の民を睥睨しているみたいな?」

「ちょっとなに言ってるか分からないけど」

「あはは。私もです。上層階でタワマンを思い出しただけです」

「君、変な子だね」

「君って、キザ~。変な子言うな~」

咲ちゃんがいると、暗いダンジョンでも明るくていいな。

おっと。この辺蛍光灯の明かりがないな。この先ずっとかな。




「どうしました?」

「ああ、この先明かりがないっぽいから松明をね」

「あ、待ってください……灯火!」

それは、ダンジョンを照らす灯りの魔法だった。

「灯り魔法使えるんだ。ありがとう」

「いえいえ」

オートでマッピングされた地図を見ながら進んでいく。

地図は、潜った人たちが通った道がパーティー同士で共有されるので、便利だ。


途中大ムカデとか鎧狸なんて、気持ち悪いのとかわいいのが揃って現れた。


鎧狸の腹太鼓は、超音波でこちらの魔法を無効化するので、咲ちゃんには大ムカデを風の刃で切り裂いてもらった。


鎧狸は、斬ろうとしたら潤んだ瞳をされたら斬れないので峰打ちにした。


「……倒さなかったんですか?」

「うん。かわいい狸系の魔物だったから」

「さっきもそうですけど、甘いと言うか。それが、勇気先輩のいいとこでもあるんでしょうけど」

困ったように咲は言うけど、このかわいい見た目のがこの先出てくるとなるとためらいはある。





すると、遠くからこちらを見る魔物たちがいた。

それは、子狸たち。もしかしてこの鎧狸の子供たちかな?




「この狸たちの子供がいるよ」

「ええ!それは見てみたいかもです。でも、見れないか~」

うむむと唸りながら僕に言う。




「返して上げましょう」

「いいの?」

「はい。私も鬼ではありません。それに家族は一緒にいた方がいいですって」

「そうだね。よし」

子狸たちは、警戒してるので少し離れたとこに鎧狸を置くと、子狸たちが集まって抱えて連れていく。


そして、こちらを振り向くとぺこりと頭を下げて行ってしまう。

魔物にも家族がいるんだよな。それでも人間を傷つけるなら倒さなきゃいけないから、心苦しい。

しかし、それでも。全員にティマーのスキルでとあれば、争わなくてもよくなるのかななんて甘いことを考えてしまう。





「少し、いいことした気分ですね」

「そうだね」

そんな気持ちを隠して返事をする。


「でも、あまり甘いと危険な気がします」

「うん。次からは、躊躇うけど倒すよ」

願わくばあの狸たちと会わないことを祈りながら歩くと、魔物を倒しつつ進んでいく。








四階に着いた。先ほどよりも薄暗く灯火の魔法を再度、咲ちゃんに唱えてもらい進んでいく。



スマホで時間を確認する。時間的にここまでかな。

「今日はこの辺にして、また明日にする?」

「もう、夕方です?」

「うん。昨日みたいに遅くなると親もしんぱいするでしょ?」

「そうですね。私がこうなったせいもあるけど、過保護なとこありますからね~」




地図を見ると、近くにエレベーターがあるみたいだ。

ダンジョンによっては、エレベーターはない場合がほとんどなので、ありがたい。


そこまで歩いていくと、「にゃん」と、猫の鳴き声が聴こえた。

「猫?」

「次は猫の魔物かー。戦い辛い」

「そうだよね。どうしようか」

通路の行き止まりにたどり着くと、パターンなのか段ボール箱に子猫。

薄茶色に黒い点々がある虎みたいな猫。



「それって、ニャーベルキャットの赤ちゃん?」

それは、普通の猫ではなくて魔獣だそうだ。

どっからどう見ても子猫にしか見えない。


「物知りだね」

「魔物図鑑は、勉強のために見ていますから」

点字の奴も用いるそうだ。

しかし、この子どうしようか。

「にゃう」

躊躇いつつも頭を撫でると、すりすり。

抱っこしたら、呑気に僕の腕で寝ちゃったよ。まあ、ほっとけないよね。



つづく

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