彼との夏休みは...(16日目)
分からない。分からないけれど、東輝が何かの決意を抱いていることは、何となく理解した。迷いはないと言わんばかりの目力があった。
「なぁ、いつからだろうな、俺たちが離れたのって」
「えっと、多分、中学二年くらいかな?」
迷いはないと思ったが、次は哀愁漂うように肩を落とし、夕暮れを仰いで聞いてきた。私もそれに答える。調度その様なことを考えていたので、答えるまでそんなに時間を要さなかった。
「だろ?それなのに、海華は何にも変わらず接してたよな。あの時と同じようにさ。あれ、すっごい嬉しかったんだぜ?」
「そりゃまぁ、幼馴染みだし?」
こめかみが何だか痒かった。
「実はな、会ったらまた冷やかされるんじゃないかって、心配をしていたんだ。ほら、今の高校って中学から上がってきてる奴多いだろ...。
いや、」
瞬間、東輝は首を振った。水気を弾く獣の如く、悲しそうに首を左右に回しまくった。
「違う、そう思い込んでいただけなんだ!俺は、自信がなかった。またいつも通りに遊びたかったし、いっぱいいっぱい遊びたかった。一緒にいたかった。」
「えっと、最近そうしてるよね?」
真剣に聞いていた。彼がシリアスに思いを語るなんて今まででは考えられなかったから。だから、その彼の思いに応えるために、固唾を飲んで聞いていた。疎遠になっていた関係が終わってしまうのではないか?という心配があったという事だろう。が、ここの違和感ばかりは口を挟まずにはいられなかった。
「はっ、」
と、何かに気づいたかのように口を抑えた。何かを隠しているのか?
「ねぇ、何かあったの?」
「ごめん、これ以上はダメだ、終わってしまう、」
「終わらないよ!何があったかは知らないけれど、私と東輝は終わらない。これからも続いていけるよ!」
友として、彼はこれからも一緒にいられる。例えそれ以上の関係になっても。
彼は泣いていた。泣きながら私にすがりついた。その体を私も抱き締めた。一応買い物袋はそっと置いた。
「そう言ってくれたんだな、そうだったんだな、くっそぉ...。」
「泣かないの、早く帰ってご飯作ろ?今日は流しそうめんするんでしょ?昔やってたやつよりもうんとでかいのを作って」
「違う、違うんだ。
なんで、何でこの世界は、
本当にならなかったんだぁー!」
※EMERGENCY※
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