買い物の帰り道(20日目)
おかしい、私が知っている間東輝という人間は、果たしてあんな人物だっただろうか?
考えてみよう。まず、私が持つあいつの印象から。間東輝とは小学生になる前から、親ぐるみで付き合いが長い幼馴染みである。昔から事あるごとに私を色々な事に誘ってくれて、私もそれに良く乗っていた。
しかし、中学に上がってから、周囲の人間が
「君達付き合ってるの?」
とか言うもので、私はそれが嫌だった。何だろう、別にあいつはそういうんじゃなくて、昔からの友達で、そう!友達だ!あいつは友達なのだ!
そう否定したこともあったのだが、周りは真面目に取り合ってはくれない。見たものを勝手に感じたことを真実だと思い込む。
そうか、私は周りからのそういった冷やかしが嫌だったのだ。勝手に決めつけて、冷やかして、囃し立てて。そんなの大嫌いだ。
あれ?なら、私はあいつの事をどう思っているのだろうか?
んー、!!?
キキーッ!!
青信号を悠々と進む車のタイヤが、地面を擦った。
「考え事しながら道路を歩くなっての、怪我ないか?」
「...。」
ビックリしたぁ、急に引っ張るんだもんなぁ、危うく腕が千切れるかと思ったわ。
「あの、痛かったか?...何か言ってくれない?」
「うひゃぁん!」
急に下から覗き込むなよ!またビックリするだろ!
「うぉ、何だ何だ、今日マジで大丈夫か?確かに夕暮れ時の西日がかなり痛いからな。つーか日傘は?」
「あ、忘れてた」
急いで鞄から折り畳みの日傘を取り出してそうとする。
「片方持つよ」
「あぁ、ありがと」
提げる買い物のビニール袋を代わりに持ってくれた。お陰でスムーズに日傘をさすことができる。
「ねぇ、」
聞いていいのか、
「何?」
あいつの声はやけに優しげというか、落ち着いている。
「東輝って、そんなんだったっけ?」
顔は上げない。見られながらだと、こっちの考えが見透かされそうな気がした。というか、今の自分は表情だけで何もかも考えを読み取られるような顔な気がした。
「そうだな、今の俺が、もしかしたら本当の俺なんだ。」
「え、」
咄嗟に顔を上げた。彼は何と言ったのだろうか?よく分からなかった。
「つまらないプライドや世間体何か気にせずに、俺はずっとこうしていたかった。」
そうだ、その顔だ。以前プラネタリウムを作ったときの表情。その顔が今は確かに私を捉えていた。