祭りと焼きそばと夜の華(15日目)
暗闇を照らす行灯、行き交う人々、香ばしいソースの香り、トントコトントコと何処からともなく鳴る太鼓の音。
私、海華は今、祭りにいる!
「焼きそば2人前お願いします!」
「あいよぉ!」
もちろんこれが目的である。何故か祭りで食べる焼きそばは格別に旨い。店主のおじさんは手慣れた早さでプラスチック容器に焼きそばを詰めて渡してくれた。
容器が何とも簡素である筈なのに、祭りという状況が、焼きそばに多大なる付加価値を与えてくれるのだ。最高っ!
「良く食うな、太るぞ?」
「らいひょうふ、ひょうなひほはへてはいはは(大丈夫、今日は何も食べてないから)」
「あそう、何言ってるか分からないけど幸せそうで何よりだ」
東輝の言葉こそ私をよいしょしているような口振りだが、目と言い方が明らかに嘲ていた。そんなやつに焼きそばを食べる資格はない!
水ヨーヨーすくいにて。
「うわぁ、」
「うわぁって何だよ、ルールに則ってるだろ?」
東輝は紙をねじった紐を一切水につける事なく、浮いたヨーヨーに乗っかっているゴムにのみ引っかけて荒稼ぎしている。それはアリなのか?視線を上げると、店主はふわぁとあくびをしている。んー、まぁアリなのだろう。
「何が欲しい?」
東輝が注文を聞いてくれるようだ。そうだなぁ、
「この、水色の水玉模様のやつ」
あえてヨーヨーの上にゴムが乗っかっていない奴を選んだ。さぁ、取ってみろ!取れるものならなぁ!
「了解!」
甚平の袖を肩まで捲り、意気揚々と返事をした東輝は、紐をヨーヨーの上にのせると、ゴムが上になるようにヨーヨーを回し始めた。いや流石にそれはダメだろ!おいおい!
「よし、ゲット!」
「ちっ」
「えぇ!ちゃんと取ったのに!」
帰路にて。
「そういや、これって
「水ヨーヨー」
って言うよね。明らかに風船なのに。」
私はバスバスと水ヨーヨー(風船?)を叩きながら、ふとある疑問を投げ掛けた。
「確かにそうだな、ヨーヨーに見えなくはないけど、やっぱりこれはどう見ても風船だな」
「だよね」
突如、花火が遠くで打ち上げられた。輝く空の花は今、何百人が同じものを見ているのだろう。
「綺麗だな」
「そうだね。」
「来てよかったよ。この花を見られたんだから。」
「何言ってんの、一応家から見えるでしょ」
「ふふ、確かに」
東輝の笑顔は、真っ直ぐに、可憐な華に向けられていた。