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目の前が暗くなったのは一瞬だった。
すぐ明るくなったけど、前のめりに倒れそうになったので両手をついて体をささえた。地味に手が痛い。
床に手をついてうつむく。体はもう浮かない。その事実に安心したように自然に息を吐きだした。
でもすぐにその床がバスの床ではありえなかったので、顔を上げた。
なんで?
はぁ? 私、今、どこにいるの?
目の前には高校生くらいの少年がいて、彼の伸長と同じくらいの長い棒を持って、じっと私を見ていた。
彼は何もいわない。
いわないから私も彼を見て、ゆっくりと今、自分がいるところを観察した。
床は冷たい石畳っていうのかな? そんな感じの床。私の周りはなんか白い線で何かかかれている。
あっ! これが、この白い線が微妙に光ってる。
え? これって、あのマンガとかアニメとかで出てくる魔法陣ってやつじゃない?
そんなかんじする・・・って! えっ! なにここ?
部屋は地下室かな? でも窓もないのに・・・といかライトもないのに明るいよ? 床の線の光だけじゃ、部屋、こんなに明るくならないでしょ?
あとは椅子とテーブルが端のほうにあって、扉は少年の後ろにあるね。
部屋にはこの目の前の少年以外いないみたいだし・・・。とくに隠れられるところもないし・・・。
ん? あれ? ほかの人は? まりちゃんは? えっ? ここ、私一人?
えっ? もしかして、もしかする? ここってばもしかして?
「異世界!!!!!」
はい? もしかして! あの噂の!!!! マンガ、アニメ、ライトノベルの! あの異世界!
もしかして、私・・・・
「勇者とか! 聖女とかになってくれとかって! 呼ばれちゃったの!!!!!」
私の大声が部屋に響く。答えてくれそうなのは目の前の少年。そういえばこの人、白髪に赤い目!珍しい! 絶対異世界人! 服だって手に持ってる棒だって、なんかそれっぽい!
そうだよ! なんていうか魔法使いっぽい!
テンションあがる! って目の前の少年をみると、思いっきり眉をひそめられた。
ん? なんか? なに?
「失敗だ」
え? なんていった、この人? はい? え? 聞き間違いじゃなかったら失敗って言った?
はぁ!?
中途半端に第一章終わりました。