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ついてないことは続くんだね・・・。
「夏休みだからって寝坊しない!」って朝から大きな声で起こされて。
「早めに行って自習でもしてなさい!」ってまだ全然補習時間まで余裕があるのに、家追い出されて。
電車は行ったばっかりで、次の電車は快速だから学校の駅には止まらない。
そうしてついた駅前のバス乗り場。バスは今にも出発しそう。
慌てて乗ったそのバスは、間違っていなかったけど間違いだった。
つまり逆回りのバスに乗ってしまったのだ。
気が付いたのは最初の曲がり角で逆方向に曲がったから。いまさら降りれないし、バス代だって余計にかかる。幸いちょっと時間がかかるだけでバス代は一緒だから、このまま乗ることにした。
「かんなちゃん、おはよう」
すわれるところないかなって顔をあげたら、一緒のクラスのまりちゃんがすぐ近くにいた。
「まりちゃん、おはよう。あれ? 部活?」
一番後ろの席が空いていたから二人で移動しながらあいさつする。
「ううん、高等部の図書館に行くの。いつもは入れないけど、長期休みは特別に中等部でも入れるんだ」
本は借りれないけどね、って説明してくれた。確かに高等部に行くならこっちのほうが・・・。
「図書館? 高等部に図書館なんてあった?」
室じゃなくて館? そんなもんあった? うちは確かに私立の中高短大まである女子校で、それなりの歴史と知名度はあるから、いろんな建物があるけど。まあ、あったところで私は行かないけどね。
「うん、高等部と中等部の校舎の間に特別棟とか講堂とかあるでしょ? そこの裏門近くにあるんだよ。高等部専用だけど卒業生も入れるんだよ」
まりちゃんは読書が趣味らしい。今まで読んだ本を教えてくれるけど、はっきりいって興味ない。
私なんてマンガとライトノベルぐらいしか読まないぞ。
「かんなちゃんは部活?」
私が興味ないことに気が付いたのか話題をかえてくれた。ごめんね、気を使わせて。返事が軽かったのは興味ないからでもあるけど、眠いからなんだ。そう、朝早く起こしてくだっさた母上が悪い。
「ううん、補習」
素直に答えたら、まりちゃんはしまった、というように顔を微妙にひきつらせた。
「補習だからお母さんがうるさくて。朝早く起こしてくれたんだよね。だから少しねむい」
「ふ、ふ~ん」
あっ、なんか余計に微妙な顔にさせちゃった。