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Make Believe
どれほどの月日が流れただろう。
庭先の黄水仙が淡く色付いて。
温かなココアが沁みるようで。
「……冷えますね」
あなたは美しいままで。
「毛布でも持ってきましょうか。それとも ―――」
けれど、反応はなくて。
「……眠ってしまったのですね」
凍え切った体躯を抱き寄せる。
困った人だ、とほほ笑みながら。
「風邪を引くというのに、まったく……」
わかっている。
その瞳がわたしを映すことはなくて。
その唇がわたしを呼ぶこともなくて。
わたしが、わたしだけが、いつまでもここで ―――
「ベッドへ行きましょう、さぁ」
痩せ衰えた体躯を抱き上げる。
最愛い人、と口付けながら。
「明日は何を ―――」
それでも、わたしは待ち続ける。
「明日は庭の散歩をしましょう。
そろそろ黄水仙が咲きますから」
あなたが目覚める、そのときまで。
「……おやすみなさい」
日本語題:箱庭の眠り姫




