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Vanilla
きらきらしい硝子の小瓶。
とろけるような甘い香り。
気付けば手に取っていた。
あだやかな香子蘭の香水に
あなたの横顔が思い出されて。
「これを ―――」
あなたに贈ろう。
わたしの気持ちとして
あなただけに贈ろう。
わたしは何も持たないから。
美しい容姿も、
勝れた頭脳も。
あなたに相応しいものを
わたしは持っていないから。
だから……
だから、この気持ちだけを贈ろう。
あなたに。あなただけに。
「あなたは ―――」
ありきたりだ、と
咲ってくれるだろうか。
日本語題:ありきたりな独占欲




