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subtle  作者: 水野葵
43/46

Vanilla

 きらきらしい硝子(ガラス)の小瓶。

 とろけるような甘い香り。


 気付けば手に取っていた。


 あだやかな香子蘭(ヴァニラ)の香水に

 あなたの横顔が思い出されて。


「これを ―――」


 あなたに贈ろう。


 わたしの気持ちとして

 あなただけに贈ろう。


 わたしは何も持たないから。


 美しい容姿も、

 (すぐ)れた頭脳も。


 あなたに相応(ふさわ)しいものを

 わたしは持っていないから。


 だから……


 だから、この気持ちだけを贈ろう。


 あなたに。あなただけに。


「あなたは ―――」


 ありきたりだ、と

 (わら)ってくれるだろうか。

日本語題:ありきたりな独占欲

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