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Spicy Talk
「……知ってる?」
つやめいた声で男が囁く。
「食べ方から夜の様子が判るんだって」
ゆっくりとパンを割きながら。
にんまりと口の端を吊り上げて。
「ねぇ、どう思う?」
銀食器に映る細い指。
沈黙に揺らめく燭火。
あぁ、なんて ―――
「当たってると思う?」
喉の焼ける料理だろう。
「……刺激が強かった?」
グラスを差し出す男を睨む。
気取った仕種が厭わしい。
「でも、刺激の強い料理もたまにはいいでしょ? それに ―――」
にやりと微笑む。
白いクロスに肘を突くと
男はそっと私の手に触れた。
繕うことなど忘れたように。
「これからもっと刺激の強いコトをするんだし ――― ね?」
私はうんざりと息を吐いた。
眉唾な俗説もなかなかどうして
当たるものだ、と呆れながら。
「……行儀が悪い」
日本語題:夜景の美しいレストランにて




