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Look at me
暗闇にぼんやりと浮かぶ白い体躯。
縋り付く細い腕。切ない吐息。
熱を帯びた声は甘く掠れて、
頰は匂い立つような紅色に染まっている。
まただ。
キミを見下ろして
ボクは小さく息を吐いた。
やるせなさに胸が塞ぐ。
いつだってそうだ。
キミは目を固く閉じて
ボクを見ようとはしない。
眉間に皺を寄せて
口許を歪ませて
ただ、苦しそうな表情を浮かべるだけ。
どれほど強く手を握っても
どれほど激しく体躯を揺さぶっても
キミは目を開けようとしない。
その目にボクを映しちゃくれない。
ボクは眦に浮かんだ涙を拭い、
指先に口付け、そっと頬を寄せる。
その瞼の裏に誰がいるのか、
その声が、腕が、誰を求めているのか、
ボクは知っている。
だけど……
ねぇ、目を開けて。
ボクを見て。
ボクだけを見て。
そんなこと、口が裂けたって言えないから
ボクはただキミの名前を呼ぶ。
できるだけ穏やかに、
できるだけ似せた声で。
「―――っ!」
キミの名前だけを、何度も。
日本語題:道化師