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subtle  作者: 水野葵
31/46

Wonder If

「お前が死ねばよかったのに」


 長い長い夜だった。


「お前が死ねば……」


 言い返すこともできなくて

 ボクはただ天井を見上げていた。


「お前が ―――」


 くり返される非情(むご)い言葉が

 本当は誰に向けられたものか、

 痛いほどよくわかっていたから。


「どうして彼が……!」


 だから、ちっぽけな肩を抱き寄せて

 ボクはいつまでも天井を見上げていた。


 あぁ、けれど ―――


 もしあのとき、キミを拒むことができたなら

 ボクたちの“今”は違うものになっただろうか。


「……どうした?」


 つやめいた声が(ささや)く。


 キミの白い肩を抱き寄せて

 ボクはぼうっと天井を見上げた。


 あの夜と同じように。


「……何でもないよ」


 何でもない、とただくり返す。


 胸にくすぶるこの後悔(おもい)

 キミに気取(けど)られないように。

日本語題:見上げる

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