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subtle  作者: 水野葵
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Door Knocker

 声が聞こえる。あなたの声が。

 いとしいあなたの声だけが

 うす暗い廊下に甘く響いている。


 わたしは深く息を吐いた。

 古()びた(ドア)を見上げる。


 この扉さえなければ ―――


 いや、きっと同じだろう。

 わたしにはできないのだから。


 部屋に入ることも、

 声をかけることも。


 どうすることもできなくて

 わたしはただ、あなたを待つ。


 けれど ―――


 この扉の向こうにはあなたがいる。


 辱められている。


 それなのに、わたしは ―――


「……ッ」


 声が聞こえる。あなたの声が。

 いとしいあなたの声だけが

 わたしの耳に甘く響いている。


「―――っ!」


 固く閉ざされた扉にあなたを(おも)う。


 何もできない我が身を呪いながら

 わたしはあなたを待ち続ける。


「今夜も長い……」

日本語題:真鍮しんちゅう獅子しし

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