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Bitter
「……ゴメン」
やっちまった、と息を吐く。
気まずさに目を逸らした。
「まさか、その……」
ごまかしに頬を撫でる。
キミはにこりとほほ笑んだ。
「何を ―――?」
ゆっくりと喉が鳴る。
「そんなコトしなくてもいいのに……」
マズいでしょ、それ、と呟くと
不意に強く抱き寄せられた。
溺れるような口付け。
知りたくもない味に顔をしかめると
キミはまたいたずらっぽくほほ笑んだ。
あぁ……
「上手くなったね」
嘘が。
ボクを、キミ自身を、欺くための嘘が。
「……どうした?」
つやめいた声で誘うキミに
何でもない、と笑ってみせる。
「何でもないんだ」
キミのなかにはアイツがいる。
忘れるコトができないのに
ずっとずっと想い続けているのに
キミはボクを受け入れようとする。
「本当に」
ボクを利用するためだけに。
でも、それを ―――
「ただ……」
愛しいとは思わないよ。
「ただ ―――」
早く、と甘くねだるキミに
ボクはそっと口付けた。
「苦いね、やっぱり」
日本語題:白い嘘




