表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
subtle  作者: 水野葵
13/44

Empty Time

 月光を思わせる白い花弁。

 むせ返るような甘い香り。


「驚いたな。まさか本当に……」


 あでやかな花にため息を()らすと

 男はにんまりとほくそ笑んだ。

 当然でしょ、と軽口を(たた)きながら。


「ボクにできないコトなんてないさ」


 またか……


 あるだけの侮蔑を込めて(にら)む。

 男はますますにやりとした。


「キミの関心を得るコト以外は」


 いつもこれだ。


 私はいらいらと舌を打った。

 うつけた口調が(かん)(さわ)る。


「ご機嫌を損ねたのかな?」


 それは失礼、と大仰に頭を下げると

 男はおどけた仕草で片手を差し出した。

 悪怯(わるび)れることなどないというように。


 だが ―――


「ご慈悲を、女王サマ」


 甘ったるい(やつ)だ、と思う。


 どうせ道化を演じるのなら

 憂いに沈むその瞳まで

 隠してみせればよいものを。


 そう、どうせ求めるのであれば ―――


「この花に免じて」


 ひと夜で散りゆく月来香。


 この白い花に、このひとときに、

 どれほどの価値があるというのか。


 あぁ、それでも……


「どうかボクに ―――」


 永遠を望んだりしないよ、お前に。


 私はまたひとつ息を吐くと

 震える男の手を取った。

日本語題:夜の女王より

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ