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subtle  作者: 水野葵
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 花が咲いていた。キミの白い肌に。


「これは……」


 あちらにも

 こちらにも


 見せつけるように

 ただ(あか)く咲いていた。


「……痛むかい?」


 指先で触れる。


 あまりにも濃く香る花に

 ボクはため息を()いた。


 隠し切れない()()の痕。


「別に……」


 何も感じないとうそぶくキミに

 ボクはゆっくりと目を細めた。


「そう……」


 指先でなぞる。


 消えてしまえばいいのに、

 忘れてしまえばいいのに。


 すすり()く声が胸を締め付ける。


「そうだね……」


 憎むべき相手に肢体(からだ)を差し出したことも、

 こうやってボクに(すが)り付いていることも。


 アイツのことさえも。


 全て ―――


「だけど……」


 花が浮かぶ。よりあでやかに。


 ボクはキミを止めない。止められない。

 復讐(ふくしゅう)に燃え、破滅に突き進むキミを

 見ていることしか、ボクにはできない。


 でも、せめて ―――


「……どうした?」


 うろんな目を向けるキミに

 ボクはまた笑ってみせた。


 哀情(あいじょう)気取(けど)られないように。


「何でもないよ。ただ……」


 花を見る。ただ紅い花を。


 見ていよう、と思う。

 花が朽ちるまで。

 キミの(そば)で、ずっと。


 だから、どうか ―――


「早く消えるといいね、これ」


 祈るようにボクは口付けた。

日本語題:あだ花

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― 新着の感想 ―
[良い点] ただただ、美しく素朴な表現でした。Twitterの相幸良らんです。
[良い点] 大人な描写が巧みでいろんな意味にもとれる話だと思いました。想像力が掻き立てられますね。色っぽさや、切なさ、愛憎渦巻く感情やらと短編の無限の可能性みたいなものを表している作品のように感じまし…
[良い点] やっと読みにこられました。不思議な小説ですね。いつもどこかにカルタシスを感じる作品だったように思えます。でも恐怖や悲しみといったその中に美しさが存在する。 実に『美しい作品』だと思いまし…
感想一覧
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