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subtle  作者: 水野葵
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Smile at me

 はじめはただ、あなたに笑ってほしい、それだけだった。


「何をしている……?」


 月明かりに映える(あか)

 むせ返る鉄の匂い。

 ゆっくりと滴る水の音。


「ここで何を ―――」


 声が聞こえる。あなたの声が。

 いとしいあなたの声だけが

 寂寞(しじま)を越えて、わたしに響く。


「お前……ッ」


 駆け寄るあなたに、わたしはほほ笑む。

 大丈夫。何も心配することはない。

 あなたを辱める()()はいなくなった。


 そう、ひとり残らず。


何故(なぜ) ―――」


 震える吐息。揺らぐ瞳。

 美しい顔が悲痛に沈む。


 あぁ、どうして ―――


「このようなことを……」


 あなたは笑ってくれないのだろう。


「お前が……!」


 あなたが笑ってくれるのであれば

 わたしのこの手も、この身体(からだ)も、

 全てがどうなろうとかまわないのに。


 そう、あなたのためならば……


「―――っ!」


 そっと頬に触れる。


 白い肌が、あなたが、(あけ)に染まり

 わたしはまた小さくほほ笑んだ。


 あなたのためなら、わたしは何でもする。


 何だってできる。


 だから、どうか ―――


「笑ってください」


 わたしのためだけに。

日本語題:あけに染まる

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― 新着の感想 ―
[一言] 情景がありありと浮かんで声が聞こえてきました。艶やかで、しっとりしているのに、どこか奥の方で乾いている。そんな声で相手の頬にふれ、べったりと朱を塗りつけるところを頭で描くとなんとも官能的でと…
[良い点] 静かな狂気とツイッターに書いてあって気になり、 読みにきました。 たった一人しか見ない生き方の果て。 抽象的な表現から見える光景は鮮やかすぎます。 [気になる点] なし。 [一言] いい…
2020/09/09 09:58 ぽんたしろお
[良い点] また読みに来てしまいました! やっぱりこの想像力を掻き立てられる文章すごく好きです。 どこまでやっちゃった女の子なのかな、とまだ考えています。
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