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22.転生した令嬢の囮作戦


 麻袋を顔に被せた状態で馬に跨るという滅多にない経験をしながら、私は連れ去られていく。

 向かう先は隠された砦。

 私を連れた男は緊張して喋らない。それも仕方ないだろう。

 彼の背後には、いつでも彼に当たるよう、矢が向けられているのだから。



 急ぎ出発した私達だったけれど、夕刻に着いた襲撃の地は既にもぬけの殻となっていた。

 ローズマリーの棺を引いていた荷馬車を見ると、一通の手紙が開封されたまま残されていた。


「アルベルト様、これって……」

「レイナルド卿は既に向かわれているだろうな」


 読み終えたアルベルトが悔しそうに手紙を睨んでいた。

 それから周囲を確認し、生き残りはいないか、何か痕跡は無いかを調べていた時だ。

 少し離れたところから男性の悲鳴が聞こえた。

 騎士団の一部が声の聞こえた方角に向かい走り出す。私はいつの間にか回されていたアルベルトの腕の中で事が終わるのを待っていた。

 それから暫くして騎士の一人が戻ってきた。


「残党狩りがあったようです。ローズ領の護衛兵を襲おうとしていた男を捕まえました」

「よくやった」


 アルベルトが私の手を引きながら騒ぎのあった方へ向かってくれた。何を言わずとも向かいたいという私の意思を汲んでくれていたようだった。

 捕らえられた男は、恐怖に顔を痙攣らせながら事の成り行きを見守っていた。

 襲われたローズ領の衛兵は、レイナルドと共に棺を護送中に矢を射られ、隠れたところで意識を失っていたらしい。ようやく起き上がれるようになったところでタイミング悪く残党狩りに来た男に見つかっていたようだった。

 詳しい状況を聞きながら、アルベルトは捕らえた男を見た。

 もしこの男も雇われた男だとすれば、口を割るのは難しいだろう。

 

 ふと、男が私を見た。

 何故見られたのだろうと不思議に思っていたけれど、私はある点に気が付いた。


「アルベルト様。彼は私が誘拐されることを知っていたのではないでしょうか」


 確信めいた想像を口にする。目の前の男は少し驚いた様子を見せた。どうやら図星のようだ。


「レイナルド様の襲撃と私の誘拐は同じタイミングを見計らって実行されたようです。彼は私がこの場にいることで、仲間の計画が失敗したと分かったみたいです」

「よく……気付きましたね」


 アルベルトは感心した様子で私の話を聞いてくれた。


「だとすれば、この男も計画の加担者の一人であることは間違いないだろう。砦の場所も把握しているだろうな。このまま連れていこう」


 男の縄を引っ張りあげる。首元に剣を向けられた男は抵抗する気も無さそうだった。


「待ってください」


 私は彼等を止めて、思い至った計画を相談することにした。

 結果、アルベルトからそれはもう、猛反対を受けたけれども。

 どうにか説得が出来た結果、私は麻袋を被り男と共に馬に乗っている。




「私を囮に使いませんか?」


 私が考え出した計画は単純で、いっきに騎士部隊が砦に攻め込んでも王都での時と同じようにティアに逃げられてしまうだろうと思った。

 それであれば、誘拐という計画が成功したように見せ、私と男が共に砦に入り隙を見て騎士団が入るという案に、一部は納得し、アルベルトを筆頭に一部に反対された。

 けれどこの場でまたティアに逃げられてしまっては彼女の尾を捕らえることが出来ないまま長続きしてしまう。


「私が囮になっている間に砦を制圧してください。退路を塞げば彼女は逃げられないでしょう」

「ですが貴女に危険が及ぶような事はやりたくない!」

「騎士をどなたか一緒に行動させてください。砦に入ってから騎士服を脱いで服を替え私を連れて行けば、多少は時間稼ぎにはなると思います。入り口まではこの男と共に入りますが、中まで入れば多少はやり過ごせるのでは」


 砦に入るまでは捕らえた男を使い、中に入ってからは騎士を誘導する。中にどれだけの兵がいるか分からない内は大きな行動をしてはいけないだろう。

 無謀な計画かもしれない。それでも私を捕らえたという一報さえティアの元にあれば、レイナルドの命も無事である可能性が高まる。

 私を彼の元に見せることで、ティアの計画は果たされるのだと踏んだのだ。


「お願いします。少しでもレイナルド様を助けられるのであればやってみる価値はあると思います」


 アルベルト自身、計画が確かにレイナルドにとっても良い可能性を見たのだろう。

 勿論私自身が危険である事は変わりない。


「必ずアルベルト様が守ってくれると確信しているから言えるんですよ」


 アルベルトが必ず守ってくれるのだから。

 絶対の自信を持って彼に告げれば、大きな溜め息と共にアルベルトは頷いた。


「私だと顔が割れているでしょうから、第一部隊長を連れていってください…………無茶は絶対にしないで。貴女の無事を第一に優先してください」

「はい。ありがとうございます!」


 そうして今。

 私は無理矢理に計画に加担させている男と共に、砦の中へと侵入した。




ストックが切れたため、間に合わない場合明日の更新をお休みします。

申し訳ありません…!

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― 新着の感想 ―
[一言] まあ、たまにはゆっくりしてください
[一言] 更新は焦らずごゆっくり! マリー囮を買って出たかww アルベルトの心労やいかに(笑)
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